コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

活動6 ロゼ・マドモアゼル ( No.28 )
日時: 2014/08/20 20:47
名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

その日の晩、学長は自宅の食卓でカミーユに
ステーキを切り分けると、食べさせるそぶりをした。
食事用のナプキンも首に巻いてあげた。
「どうだい、おいしいだろ?」
「えぇ、でももう少しレアにしてほしかったですわ」
カミーユが学長に話しかけるが、口は全く動いていない。
どうやら声は学長にしか聞こえていないようだ。
「美しい、君はエヴァそっくりだよ」
学長がカミーユに見とれる。

エヴァとは、五年前に白血病でこの世を去った
学長の前妻だった。
壁にかけられたその写真は、カミーユそっくりだった。
「ずっと一人で辛くはなかったのかしら?」
カミーユ(CV:ゆかなさん)が尋ねる。
「寂しかったとも、だが私は今は寂しくはない
君と出会えたからね」
学長が笑顔を見せる。

その後も、学長はひと時もカミーユから離れなかった。
お風呂も一緒に湯船に入り、
寝るときも同じベッドだった。

翌日、陽子が学長室に入ってきた。
「おおっと、学長
その人形はどうしたんですか?」
「人形ではない、私の妻のカミーユだ」
学長はカミーユに紅茶を入れると、
カップを持って口元にあてる。
「おいしいかい?」
「まだまだね、温度が低すぎるし
動物性ミルクも使ってるし……」
「すまなかったよ、今度は気をつけよう」
学長が一人で人形に話しかける光景は
陽子には異様に写った。

「と、いうことだ
人形に恋をするとはあの人も何かを
まいてしまったのか?」
部室で陽子は、一義に相談をしていた。
「でもあの人形に心底惚れているなんて
おかしいよな」
「そうだ、あの質屋の店主に聞いてみよう
何か分かるかもしれない」
元治が提案した。

「あの人形は、19世紀半ばに
フランスの田舎町で当時無名だった
カミーユ・フィリップスという女性職人により
作られたものだった」
店主が人形について一義たちに話す。
「カミーユ?
あの人形の名前もカミーユだったわね」
小百合が一義に尋ねる。
「他に何か知ってることはありませんか?」
陽子が尋ねるも、店主は首を横に振った。

数分後、一義たちは元治の自宅の
豪邸の書斎にいた。
「随分でかいな」
図書館を見渡して陽子が呟く。
「そりゃそうさ、ここには
五万冊以上の本があるから」
元治が誇らしげに言った。
「それはすごい、だがお前には読めなそうな本が
たくさんだな」
陽子が笑う。
「そんなことはないさ、オレが読むのは
小林多喜二(蟹工船の作者)や
ゲーテなんかを嗜むよ」
元治が笑う。
「ゲーテなら私も読んだぞ、
作者が思い出せんが」
陽子が反論する。

書斎の奥から、小百合が大きな本を持ってきた。
「これを探してたんでしょ?」
机の上に本を置く。
800ページはありそうな分厚い本で、
そのタイトルは「人形の歴史」とあった。