コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

活動7 絶望のチョコレート工場 ( No.34 )
日時: 2014/08/29 02:31
名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)

その日の夜、一義たちはこっそりと
工場のレーンに忍び込んだ。
「あっ、あんたら……」
作業員の一人が一義たちに気づく。
「静かに、実は今日は皆さんを
助けに来たんです」
一義が作業員たちを集めた。

すると、一義はレーンの中央の
ベンチに立つと、大きな身振りとともに
演説を始めた。
「1969年の現在、この先進国と呼ばれる
日本で我々は必死に働き、
少数の人間は楽に生きられるのか?
それは我々の汗や涙があるからだ!
我々の金が不当に奪われているからだ!」

「おい、あいついつからあんな
独裁者みたいな演説できるようになった?」
元治がおっさんに尋ねる。
「さぁ、てかなんであいつ
労働者代表みたいな感じ出してんだ?」
おっさんが首をかしげる。
「なんか説得力ないよね……」
小百合が冷ややかな目で見つめる。

「さぁ我々は今こそ立ち上がるべきだ、
労働者の時代だ!」
五分ほどに及ぶ長い演説が終わった途端、
作業員達の拍手が轟いた。
「あの工場長の言いなりなんてもうごめんだ」
作業員達が叫ぶ。

一方、工場長室ではバートリが重役と思しき
男とモノポリーをしていた。
工場長室は金色の壁にイタリア製の高級ソファ、
大きなシャンデリアがぶら下がっていた。
それらは作業員達の給料から買ったものだった。
すると、重役がバートリの後ろの
監視カメラのモニターに指を向けた。
「大変です、バートリ様」
バートリがモニターに目を向けると、そこには
「出て来い、工場長」と書かれた
プラカードを掲げる一義たちがいた。
「最悪、あいつら何考えているの?」
だるそうにバートリが席を立つ。

作業レーンの二階にバートリが現れると、
一義たちが二階まで行進してきた。
「何してるの?
さっさとラインに戻りなさいよ」
バートリが一義たちを睨みつけた。
「我々はこの労働環境をよくしてもらうまで
断固として働かない、
労働環境を改善するよう命令を伝達する、
この要求を呑むか?」
一義が叫ぶ。

バートリが笑った。
「アハハハ、さしずめ
労善命伝(ロウゼンメイデン)ってとこかしら?」
「あっ、うまい」
絹恵が感心した。
バートリが続ける。
「あんたらの要求なんか呑まないわ、
ボロボロになるまで働かせてやる、
ここを絶望のチョコレート工場としてやるわ!」
バートリが高笑いをする。

すると次の瞬間、バートリの足場か崩れた。
「キャアアア」
バートリが家康とともに一階の
チョコレート原液のタンクに落ちた。
「助けて!」
バートリが叫ぶ。
タンクの底にバートリと家康が沈んでいく。
「ふん、ざまぁみろ」
作業員の一人が笑った。

作業員達は誰一人として
バートリを見捨てようとしていた。