コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

活動7 絶望のチョコレート工場 ( No.35 )
日時: 2014/08/29 14:47
名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)

足場が崩れたのはバートリが
老朽化した工場を放置していたのが原因だった。

「助けて!
私、泳げないんだ!」
原液の中でバートリがもがく。

「今までの罰が当たったんだ、
お前なんて見捨ててやる」
作業員達があざ笑う。
しかし、作業員の一人がタンクに向かって走り出した。
「おいお前ら、見捨てていいのか?」
作業員が叫ぶ。
「もしここで彼女が死んだとして
この工場はどうなるんだ?
彼女だってオレたちと働いてきた仲間のはずだ、
見捨てるなんてあんまりじゃねぇか?」
作業員達に戸惑いの表情が出始めた。
すると、もう一人の作業員が原液を
放出するためにハンドルを回し始めた。
他の作業員達もタンク内を空にすべく
手伝い始めた。

「うぅ……」
チョコレートまみれになったバートリが
目を覚ました。
「ここは……」
「工場内だ、あんた運がよかったよ」
一義がバートリに話しかける。
バートリの周りには作業員達がホッとした表情で
バートリを見守っていた。
「あんたのためにみんなで協力したんだ、
あんたもここの仲間だからってな」
おっさんがバートリに話す。
すると、突然バートリが泣き出した。
いつも強気なバートリが涙を見せたのは
これが初めてだった。
「ごめんね、みんな
私が間違っていた」

バートリがこの工場を任されたのは先月だった。
「先月、私のパパが亡くなって
この工場を私が受け継いだんだけど
私は利益ばかりを求めてみんなを
タダ働きさせていたの」
バートリが泣きながら作業員達に頭を下げる。
「ここの人たちはあんたを許してくれた、
罪を憎んで人を憎まずってね」
小百合が笑顔で話す。
「ここの人たちはあんたを大切に思っていたのさ、
ボーナスぐらい出してやってもいいんじゃねぇか?」
おっさんが笑う。
「それもそうかも、私はもう間違いを
犯さない」
バートリも笑った。

翌日から、工場の様子は一変した。
向上の労働体制は一新され、作業員達の給料もアップし
労働時間も短縮された。
作業員達は全員、怯えた表情ではなく
笑顔で作業をしていた。
それまで全く作業をしていなかったバートリも
他の作業員達と笑顔で包装の仕事をしていた。
「やっぱり働くのは楽しいね、
よーし、今月は全員にボーナス出しちゃおうかな」
労働者がいなければ資本家は何も得られない、
バートリはようやくそれに気づいたようだ。

一方、相変わらずチョコレート原液のタンク内には
大きな塊が沈んでいた。
それはまぎれもなく家康だった。
「あれっ、私なにか忘れてる気がするんだよな
ま、いいや」
バートリはそう呟くと、
再び作業に戻った。