コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 活動8 狂演! 夜のヴィブラート ( No.36 )
- 日時: 2014/08/30 02:45
- 名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)
その日も一義はいつものように
元治の運転するアルピーヌ・A110(フランスの
自動車メーカー、アルピーヌ社が製造していた
小型スポーツカー)の助手席に乗って
大学へ向かっていた。
大学近くの交差点で信号待ちをしていると、
アルピーヌの隣にアストンマーチン・DBS
(イギリスの自動車メーカーアストンマーチン社が
製造する高級スポーツカー)が停まった。
「随分高そうな車だな」
一義が元治に話しかける。
「あぁ、ジェームズ・ボンド(人気スパイ映画
007シリーズの主人公)でも乗ってるんだろ
ミサイルとか装備されていたりしてな」
元治が笑った。
大学に到着し、アルピーヌを駐車場に停めると、
先程のアストンマーチンが向かいに停車した。
一義と元治は運転席から出てくる運転手の姿を眺めていた。
運転席から、腰まで伸びた銀髪にブラウンの瞳、
ざっくりと胸元の開いた白衣に身を包んだ
セクシーな大人の色気漂う女性が降りた。
「すげー美人じゃん……」
一義が呟く。
「あぁ、まさにボンドガール(ジェームズ・ボンドと共に
戦うヒロイン)って感じだ」
元治も同意する。
一義はその日も大学の工学部で実習を受けていた。
この日は工作の授業があり、木材を使い
棚を作る予定だった。
「ぎゃぁぁ」
一義の叫び声が響く。
どうやら、ハンマーで指を叩いてしまったようだ。
「なぁおっさん、保健室行っていいか?」
スポーツ新聞を読んでいたおっさんに尋ねる。
「ダメだ、お前にあの保健室のいやらしさは早すぎる」
おっさんは断固として拒否した。
「なんでだよ、てかいやらしさなら
女子更衣室とかのほうがいいだろ!」
「バカかお前、あそこは女同士の愚痴ばかりで
なにも楽しくはねぇぞ」
おっさんと一義が不毛な言い争いをしているなかで、
一義の指は青くなってきていた。
「これはダメだ、もう保健室行くからな」
一義が強引に保健室へ向かう。
「ヘヘッ、これまで保険医さんはおばさんばっかり
だったからな、あんなので妄想しちゃうほど
オレも飢えてないぜ」
そう思いながら、一義が保健室のドアを開く。
「あらぁ、どうしちゃったの坊や?」
ロスマンズ(イギリスのタバコブランド)のタバコを咥えた
保険医は、先程のセクシーな銀髪の美女だった。
「うわぁ、保健室ってこんないやらしかったのか!」
一義が興奮した表情で話しかける。
「ゆ、指を痛めちゃって……」
「見せてみなさい、あらぁ
これはひどいわねぇ」
保険医が満面の笑みで青くなった指をさする。
激痛が走る。
「どうせ指を叩いたでしょ?
そういうことする間抜け面してるわよ」
冷酷な声で言い放つ。
「坊やみたいな間抜けがいるから私が食べていけるんだけどね、
放っとけば直るはずよ、さっさと
出て行きなさいこのゴキブリ君」
満面の笑みで一義を追い出した。
結局、青くなった指のまま一義は
放課後、部室に顔を出した。
「その指どうしたの?」
小百合が一義に尋ねる。
「なんでもねぇよ、オレみたいなゴキブリ君には
これがお似合いさ」
一義が薄ら笑いをする。
「あいつ、あんなことを堂々というほど
調教されていたんだね」
小百合がキャロルに尋ねる。
「きっと深い闇があるんだよ、かわいそうに」
キャロルが哀れんだ表情を見せる。