コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 活動8 狂演! 夜のヴィブラート ( No.38 )
- 日時: 2014/09/01 19:37
- 名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)
イングランドのボビー・チャールトン、
西ドイツのフランツ・ベッケンバウアー、
ブラジルのペレ、
ポルトガルのエウゼビオ、
ソ連のレフ・ヤシンなどの
スター選手が集結した1966年のワールドカップ
イングランド大会をおっさんは観戦に行っていたのだ。
決勝戦前夜、会場となるウェンブリー・スタジアム
近くにあるパブ(イギリスの酒場)でおっさんは
ビールを飲んでいると、隣の席に座った
レベッカに声をかけられた。
「あなた東洋人?
このあたりでは珍しいわね」
なんでもレベッカはこのパブの女主人で、
東洋人についての研究に没頭していたという。
「今夜は私がおごるわ、
もっと日本について教えて欲しいの」
レベッカがおっさんを誘惑した。
数時間後、二人はパブ近くの
安ホテルのベッドの上にいた。
「なぁ、ひとつ聞いてもいいか?」
おっさんがロスマンズを吸うレベッカに尋ねる。
「その肩にあるタトゥーはなんだ?」
たしかに、レベッカの肩には蛇のタトゥーがあった。
「これは魔女の証よ」
そう答えると、ベッドの下からブローニングM1910
(ベルギー製の小型のピストル)を取り出すと
おっさんの頭に突きつけた。
「悪く思わないでね、これは私が死ぬために
必要なものなの」
レベッカは17世紀、魔女の娘として生まれた。
彼女の母親はレベッカが生まれてすぐ
魔女裁判にかけられ絞首刑にされたが、
彼女は死ぬ間際、娘も同じ道をたどらぬよう
レベッカの魔力を封印したのだ。
そのとき、彼女は魔力を封印される代わりに
不老不死となったのだ。
「この不老不死を終わらせるためには
東洋人の心臓、悪魔の涙、竜のうろこが必要なの
このうち二つは手に入れたけど、あとひとつが必要だった、
それが東洋人の心臓よ」
「おいおい、不老不死の何が気に入らないってんだ?」
おっさんが尋ねると、レベッカは涙をこぼした。
「不老不死の辛さをあなたは何も分かってないのよ」
レベッカは幼少時代、魔女であることを隠して
たくさんの友達を作ったが、いずれもレベッカよりも先立っていった。
また、レベッカは三度結婚したが、いずれも夫は先立っていった。
そして戦時中、レベッカは空襲で瓦礫の下に生き埋めにされた。
死んだ方がましとも思えるほどの怪我で痛みに苦しみつつ、
目の前で自らの子供はおろか、孫までも死んでいった。
さらに、不老不死の秘密を求めて様々な研究機関などから
誘拐されそうになるなど、辛い人生を400年以上続けていた。
「そうかい、じゃあ楽にしてやるよ」
おっさんは咄嗟にベッド脇の花瓶を手に取ると、
それでレベッカの頭を叩きつけた。
「うぅ……」
レベッカが倒れる。
その隙におっさんは命からがら逃げ出すことに
成功したのだった。