コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.11 )
- 日時: 2014/07/31 11:38
- 名前: 音宮 (ID: IvdLyRwl)
第二話 [出会い]
いつもと同じ朝が来る。「おはよう、梓」
兄がカーテンをいつものように開け、朝日が私の部屋に入ってくる。
やっぱりまぶしい。
暗い部屋から突然明るい部屋になると目がちょっと変になる。
「おはよう、お兄ちゃん」
するとにこっと笑ってこちらを見る。
朝から爽やかすぎるぜ、兄よ。
一階にいつものように抵抗もできないまま、
抱っこされて降りる。
ダイニングには更科さんが服を着替えて
朝食を食べようとしていた。
「おはよう、梓ちゃん。今日も二人は仲がいいね!」
抱っこされている姿をみてか、そういってくる。
別に好きでされているわけじゃないのにな。
すると兄が嬉しそうにする。
「だろ?俺たちは仲がいいんだ!」
それって自慢?って思ったが、言わないことにした。
いつものように学校を終えて更科さんと帰ってきた。
ちょうどシャーペンの芯が足りなくなっていたから
更科さんと近くの文房具店に一緒に行くことにした。
「じゃあ、梓ちゃん。俺はこっちでノートを見えいるから」
お互いに違う売り場に行くことになった。
「はい、じゃあまたあとで」
うーんとえっとこの辺だったよな。
あ、これこれ。
私はこれのBしかだめなんだよな。
それを取ろうとしたとき、誰かの手と重なる。
うん?その人物と目が合う。
- Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.12 )
- 日時: 2014/08/21 13:24
- 名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)
状況を理解できるまでの空白の数秒間。
相手の瞳には私の顔がはっきりと映っている。
そして
「ごごごめんなさい!!どど、どうぞ、お先に!」
同時に二人は飛び退く。
その人物は男であった。
年齢は私と多分変わらないはず。
外見は、紺色の髪に逆三角形の輪郭…すっとした高い鼻。
なんといっても目立ったのがオレンジ色のくっきり二重の瞳。
さらに詳しく見てもきれいであった。
ぷっくりとした唇、
うらやましいほどの長いまつげ…
その美しすぎる美貌を目の前にし、私は見とれてしまう。
「あの、俺の顔になにか?」
相手の顔を穴が開くほど見ていたのでそう聞かれてもやむおえない。
「いいえ。きれいだなって思って…」
「きれい…?そんなこと、言われたの初めてだよ…」
相手はなんでそんなことを言ってくれるのか、わからないようだった。
まるで自分の顔を見たことがないように。
「はじめてなんですか…?」
「ああ、そうだよ。君が初めてだ」
それもそのはず、彼は”空白”であった。
何も知らない真っ白な男の子。
何の感情も知らない、そういったようだった。
私は多分、美貌だけじゃない。
その真っ白さにきれいだって言ったのかもしれない。
彼には何もなかったんだ、きっと。
誰にも愛情、憎しみ、悲しみ、友情をあげてはいなかった。
だからこんなにもすばらしいくらいに真っ白。
私にはそれが不思議であった。
どうやったらそんなに真っ白に、なれるのかと。
誰もが感情をもっている、人間はそういう生き物なのに。
私にすべてを見透かされそうで嫌だったのか
「あ、急いでいるから、じゃあね、七色ちゃん!」
彼は腕時計を見てそう言って芯を持ち、その場を去った。
彼が私を呼んだ名”七色ちゃん”。
なんでそう呼ばれたのか、私にはなんとなくわかっていたのかもしれない。
「決まった?梓ちゃん」
更科さんが声を掛けてくる。その手には目的の物が握られている。
「うん…。今ね、真っ白な男の子がいたの…」
まだ男の子が走り去った方をみてそばに来た更科さんの袖を引っ張り、そういう。
「ええっ?そんな男の子、いないよ、梓ちゃん」
更科さんも私と同じ方を見るが、梓ちゃんおかしいよって言う顔をしながらそういう。
「いたの…。さっき。ホントだよ」
「それは梓ちゃんの妄想か想像だよ、きっと。それよりも早く帰っていないと慧さんに叱られるよ?」
更科さんにそう言われ、しょうがなくその場を離れたが、私は先ほどのことを本当だと信じる。
私は今日、真っ白な男の子に出会ったんだって。
- Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.13 )
- 日時: 2014/08/21 13:30
- 名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)
「だーかーらっ!真っ白な男に会ったんだってばっ!」
私はバンと持っていたフォークを置き、
兄たちに訴える。
現在、兄と更科さんと私の三人でいつものように
夕飯を共にしていた。
「え?あー、ハイハイ。分かったから早く食べちゃって」
兄は、バカにしたように私に言い、話をそらそうとする。
絶対に分かってないでしょ、兄よ。
さっきからこんな感じである。
私がどんなに真剣に話しても信じようとはしない兄。
「更科さぁーん。お兄ちゃんが信じてくれないよぉ。更科さんは信じるでしょ?」
隣に座っている更科さんに理解を求める。
すると苦笑をするだけで口も聞いてくれない。
「なによ、二人して。私の話を信じてくれないなんて」
そういうと二人はそれは心外だなと言った顔をする。
「別に梓の話を信じていないわけじゃあないよ。むしろ俺も椋も信じてる」
「じゃあ、なんでさっきから笑ったりするの?」
すると二人して薄く笑って同時にこう言った。
「「怒っている梓が可愛いからもう少し怒らせたかったから」」
へ、変態だー。
こんな発言を言っている時点でやばいと思う。
人を怒らせたいとかもう変態としか見れない。
それにしても兄の私に対する気持ちに更科さんもちゃんと付いてきてるって…。
ぎゃあああ、兄に更科さんがどんどん汚染されていくよ。
かわいそうな更科さん。
でもあなたしか兄に対応できないと思います。
だからこれからもシスコンバカ兄をどうぞよろしくお願いします。
少しの間、更科さんを憐れむように見つめる。
心の中でそう思う一方、ちょっとその発言を嬉しく思う。
なぜなら"かわいい"って言われるのは誰でも嬉しいと思う。
私も人間であるからやっぱりこう言われると、
どんな状況でも嬉しいものは嬉しいのだ。
「お、お兄ちゃん…更科さん…」
「そういうわけで。早く食べちゃって、梓」
その発言以降、私は何も言えなくなってしまい、
おとなしく食べることにした。
「はーい」
ちなみに今日の夕飯はハンバーグでした。
作ったのは、もちろん兄です。
- Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.14 )
- 日時: 2014/07/31 11:44
- 名前: 音宮 (ID: IvdLyRwl)
あの不思議な出会いから数日後の7月20日の今日。
私の学校は今日から夏休みになりました。
もちろん、山ほどの宿題と共に。
「はぁー。今日から夏休みなのにどうしてこんな気持ちなんだろう?」
私のクラスメイトであり、
親友である古舘 希ちゃん(ふるだて のぞみ)が
下校中にいってくる。
今日は更科さんと私と希ちゃんで下校しています。
「えっ?希ちゃんは夏休みになったことは
うれしくないの?」
更科さんが身を乗り出して聞く。
「そりゃあ、私だって嬉しいですよ。
でも、沢山の宿題、そして大会…。
めんどくさいものばかりじゃないですかっ!」
そう、希ちゃんは、バレー部に所属しているのだった。
運動部なのでときどきしか一緒に帰れない。
すると更科さんは、あははっと大きく笑って言う。
「しょうがないよ。だって希ちゃん、バレー、
上手だもん」
「そんなこと、ないですよ…っ。私、全然、上手なんかじゃないです」
否定する希ちゃんもかわいいな…って思いながら
歩く。
他愛もない話をしながら歩いて帰っていると
すぐに家の近くまできてしまう。
分かれ道、希ちゃんと別れる。
彼女は大きく手を振りながら帰って行った。
「元気だねー、希ちゃんは」
更科さんが彼女のそんな姿を見て言う。
「そうですね、希ちゃんは元気っ子ですから」
「あ、ごめん。俺、これから友達と会う約束だった。俺、今すぐにいかなくちゃいけないんだけど
梓ちゃん、一人で大丈夫かな?」
スマホにメールが来たらしくあせる更科さん。
「大丈夫ですよ、私は。それよりも友達との約束を優先させてください。」
ニコッと笑い、更科さんに応える。
そうすると安堵したように更科さんは肩をすくめる。
「ありがとう、梓ちゃん!恩に着るよ。このことは慧さんには…」
「分かってますって。送ってくださって本当にありがたいです」
じゃあって言って更科さんはその場から走り去った。
きっとサークルかなにかなのかな…と思いながら
更科さんの後ろ姿を見送る。
少し歩くと近くの公園がある。
時間もあるし、少し休んでから帰ろうと思い、
公園に入ってベンチに向かう。
ベンチに向かうと、そこには先客がいた…。
木陰の中、その人物はすやすやと寝ていた。
- Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.15 )
- 日時: 2014/07/03 17:54
- 名前: 音宮 (ID: E65yOnkB)
二人の間にそよ風がさわっと通り過ぎる。
私からの視線に気づいたのか、その人物は起き上がる。
「……」あたりをキョロキョロと見まわして私に目が留まる。
「き、きみ…は…?だれ…だっけ…?」
言葉がつっかえつっかえだ。
そう、その人物はあの真っ白な男の子だった。
上から下まで着ている洋服は純白。上のワイシャツのポケットには何か入っている。
「白…君…」私は第一印象を言う。二人とも目には相手しか映っていない。
「あの時の…七色ちゃん…?」
首をかしげてかわいく言ってくる。もしかしたらこの姿は女子よりもかわいいんじゃないかと思うほどに。
「七色ちゃん…君はなんでここにいるの?僕の想像でしかいないはずなのに。どうして…?」
想像…?
彼は私を想像上の人間だと思っているらしい。
それだけは信じてほしくない。
「違うよ、私は存在してるよ、今ここに。白君こそ、なんで…」
彼は立ち上がって手を伸ばしてくる。
そして両手で私の顔を挟むようにして自分によく見えるようにした。
「ほ、本当だ…。僕は夢を見ているのか…?君に会いたくて会いたくて
それだけを考えていたから…」
よく見ると肌の色も光に反射してか白く見える。
「会いたかったの…、私に?」
「そうだよ、君に僕はなぜか会いたかった」
「……」
沈黙が訪れる。そよ風がざわついている。
まるで二人の仲を噂しているみたいに。
「七色ちゃん、僕は…君が…不思議でならない」
「私もあなたが…不思議でしょうがないよ」
- Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.16 )
- 日時: 2014/07/31 11:48
- 名前: 音宮 (ID: IvdLyRwl)
その頃、兄 慧は、車を走行中。
「ふふ。今日の夕食は…?何作ったら梓は喜ぶだろうか…?」
俺は、いつものように夕飯を何にしようかを考えながら家へと帰っていた。
近くの公園を通り過ぎようとしたとき、
一瞬だけれども梓がみえた気がした。
まさかなと思いながらもやっぱり気になるので、
車をその近くに止め、現場へと向かった。
そこにいたのは…見つめあう二人の男女。
それは、梓と…
身知らぬ男だった。
信じられないことに俺は、息をのんだ。
絶対に学校のやつと椋、俺以外の男に関係を
持っていない梓なのに。
そして俺から注意深くその点を見張られているというのに、
そいつは俺の知らない男であった。
俺が息をのんでその場に立ちつくしていたのは
一瞬だった。
見つめあう二人をすぐさま、引き離して梓を
公園から連れ出そうとする。
「お、お兄ちゃん…?」
俺に引っ張られながら見上げてくる梓は
何が起こっているのか、わからないようだった。
「梓、何を考えているんだ?まっすぐ家に椋と一緒に帰ってくるって約束だろ?」
「ごめんなさい。ちょっとだけ木陰で休むのもいいなって思って…」
素直に謝ってくる。
いつもだったらここで許してやるが
今日は状況が違う。
大事な大事なかわいい妹が、
俺の知らない男と一緒であったのだ。
せっかくここまで他の男どもに
見つからずにきたのに。
俺の努力が、水の泡になってしまう。
「庭にも木陰はあるだろう。しかもなんだぁ?あの男は」
「あの方はね、ほら。前にも話したでしょう?不思議な子がいたって」
そんなこと話していたっけなと思いながら聞く。
そして憎いのが、梓の顔。
頬は紅潮し、瞳はキラキラと生き生きしている。
その姿は、恋を奴にしているような…。
でも梓は、まだ自分では気づいていないらしい。
だが、気が付くのも時間の問題だろう。
梓は頭がいいからすぐに自分の気持ちに気付くはず。
ならば、早くこれをなんとかしないと。
「あの方、私のことを”七色ちゃん”って呼ぶの…」
「ふーん。ほら乗って」
車のドアを開けながら相づちを打っていく。
最もほとんど聞いていないが。
「うん。ありがとう。それでね…」
車に乗ってもまだ話を続ける梓。
そんな梓を見て、これは結構、俺が思っている以上に
「まずいことになったなぁ…。どうやって奴を…?」
小声で言う。
何?聞こえないよぉ。お兄ちゃん、何て言ったの?」
しゃべり続けていた口を閉ざして俺に顔を向ける。
「なんでもない。梓が気にするようなことじゃない」
「そっか」
えへへって笑う梓を横目でちらっと見て思う。
梓が悲しまないよう気をつけながらやらないと。
まずはどうやって梓の記憶から奴を追い出すかだな。