コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.19 )
日時: 2014/08/12 16:32
名前: 音宮 (ID: IvdLyRwl)

第三話[恋なのですか…?]

あの方を考えると胸がどっき、どっきと高鳴るの。
これっておかしいですか…


あの日を境に私と彼は一度も会ってない。
兄に付き合い、夏期講習を受ける今日この頃。
私は、兄の授業を夏休みはいってからずっとうけていた。

「…ずさ」気温24度と快適なこの部屋。私は、なぜかボーっとしている。
「あずさっ!」兄に耳元で大きな声で呼ばれビクッとする。
「はぁひいいい!」
「何してるんだ?手が止まっているぞ!」
ノートを差し、指摘する兄の姿は教師モードそのものだった。
教師モードとは、兄が私を特別扱いをしない、真面目な人になることで
通常とはまったく私への接し方が違います。
「はいっ!ええと…」
焦る私は急いで問題に取り掛かる。
「そうじゃない!梓、なんでそうなるんだぁっ!」
どんどんと机を叩く。
「またやってんの?」
入るよーって声を掛け、ジュースを運んで来てくれたのは、
やはり更科さんである。
更科さんと兄の関係上、頻繁に兄の家で更科さんが泊まることが多い。
しかもなぜか、更科さんは私の家の合鍵を持っている。
兄が渡したのだろうか。
そこまで信頼できる仲とは妹の私から見ても羨ましい。
「ああ。梓、違ってんぞ、そこ。ほら、また同じ間違えをしている」
うう。そんなに言わなくても…。
消しゴムで消しながら兄の顔を見る。
眉間にしわを寄せていて怒ったような顔。
私が見ていることに気付いたのか、目がギロッと睨んできて怖い先生を感じる。
「まあまあ。もうちょっと優しくしてあげてよ、慧さん」
それを見ていた更科さんが場を和ませる。
わぁあ、更科さん、天使です。
「………」
頬を赤くして喜んでいるのが分かったらしい兄は
「こらっ、手を止めない!」
ペシッと赤ペンで机の端を叩く。
うう、悪魔めー。
「慧さん、そんなに徹底しなくてもいいじゃないですか?
普段はあんなにかわいがっているのに。なんかこの光景を見ると
あのシスコンぶりだった頃が不思議に思えてきます」
くすくすと声を殺しておなかを抑えながら笑う更科さん。
「しょうがないんだよ、椋。梓は教師の妹だから学年トップで居続けな
いといけないんだよ」
「そんなの、誰が決めたのよ」
ぷっくりと頬を膨らませて兄に反抗する。
「”梓の大好きなおにいちゃん”だよ。目の前にいるでしょ」
わざと最初のほうを強調して言う。
「どこー?」
からかうように手をおでこにあてて、見渡すように言ってみると
頭をぽんっとはたかれた。
「ばーか、ここにいるじゃん。ほら早くやれ!」
「分かったよ、もう」
兄に怒られながらも私はその日、11時間にもわたる勉強の地獄をやり
とげた。

Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.20 )
日時: 2014/07/11 08:33
名前: 音宮 (ID: JgT8Ge3V)

真っ白な男side
目を開けると、そこは真っ白な世界。
壁も
床も
天井も
真ん中にある机と二つの椅子
ベットも
俺の着ている服も
全部、全部
真っ白だった。
だから俺は
この部屋が大嫌いだった。
トントン。いつものように俺に食事をあたえるために奴が来たらしい。
「入りますよ、……」
奴は、俺にしか聞こえない小さな小さな声で俺の名を言う。
「どうぞ」
そっけなく応答する。
奴は部屋と同じ色のワンピースを着ていた。
「ここに置いときますよ、……」
「ありがとう、”夢”」
俺は彼女の偽名を呼ぶ。
夢と呼んでいるのは、わけがあるが、今は良そう。
「では」
がっちゃん。
ドアを閉めていく。
これもいつものこと。
俺たちは同じ毎日を送っている。
でも最近は、”七色ちゃん”のことで…。
俺のもう一人が頻繁に出てくる。
「……真」
あいつの名前を呼ぶ。
呼ぶとあいつと心の中で会えるのだった。
しかし、現実で気絶してしまうが。

Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.21 )
日時: 2014/07/11 23:51
名前: 音宮 (ID: JgT8Ge3V)

気が付いたら霧に包まれた場所にいた。
まるで天国みたいなところ。
俺はどうやら心の中に意識を持ってくることに成功したらしい。
あいつが霧の中からやってきた。
「なにかな、奏。僕のこと、もう呼ばないんじゃないの?」
無表情できいてくる。
奴は俺の過去から生まれた存在。俺の唯一の弱点とも言ってもいいだろう。
俺の本当の姿=真実の意味をもつ奴の存在。
そしてその意味からつけられた奴の名前。
「べつに。俺、そんなこと言った覚えないけど勝手に聞き間違えしたんじゃないの?」
それに比べて今の俺はひねくれていて強がってばっかりの性格悪。
奴が純粋すぎてきれいすぎて、
だから俺は…
嫌いだった。
奴はすべてをしってる。
俺のことを。
でも感情や表情は俺の過去が辛すぎて悲しすぎて衝撃的なものだから
どこかに置いてきてまたは忘れてしまったらしい。
「またまた…。奏はそんなこといっちゃって…」

Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.22 )
日時: 2014/07/14 17:38
名前: 音宮 (ID: JgT8Ge3V)

「俺がそういったんだ、真は俺の言うことを聞いていればいい」
「……そう」
どこまでも無表情でしゃべるこいつと思う。
そうなったのも俺のせいなんだよなと思うとなんだか申し訳なく思ってきた

Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.23 )
日時: 2014/07/19 12:03
名前: 音宮 (ID: JgT8Ge3V)


「ほらほら。用が無かったら僕は帰るよ」
真はそういって背を俺に向ける。

「待てよ、真。一つだけ聞きたいことがあるから」
真を引き留める。

「何?奏」
振りかえる真の声は高い。
この声を出すときの真は喜んでいる。

「あのさ、七色ちゃんのこと…」
最後まで言ってないのに真は分かったように言う。

「好きだよ。僕はあの子に惹かれている。
 あの子は僕が見つけた子、だから
                  とらないでね」
そういって彼はまた霧の中に消えっていった。
彼が見えなくなると同時に、俺は現実へと引き戻される。
トントン。
「……さん。お昼です、いらっしゃいますか」
どうやらあっちにいる間にもうこっちではお昼らしい。
ぐーとおなかが鳴る。
気持ち的には食べたくないのに体はそうでもないらしい。
「いるよ」
そういうと昼食を持ってきて部屋へと入ってくる。
「あの、午後から検査等がありますから出かけないでくださいね」
俺は検査という言葉に手を止める。
検査。
俺の能力、才能を調べるもの。
俺は生まれつき、普通の人間では考えられない能力、才能を持っている。
運動神経はアスリートよりも優れているらしいし、
頭のよさも普通では考えられないほどの学力、
未来を予知する予知夢だってみることができる。
それらをもっと詳しく調べるため俺は週1程度で検査等を受ける。
これはもう生まれたときからのことであるから
慣れているけどやはり怖いものは怖い。
自分にあてられる注射や針、電子機械、レーザー。
どれもすべて怖い。
一つ、間違えば死んでしまう。
俺は毎回、その恐怖におびえている。
それをいつも安心させてくれる人が以前はいたが今は…もういない。
「では、失礼します」
涙をぽつぽつとたらし始める俺を哀れな目で見ながら夢は部屋を出る。
「………」
俺はその人がくれたお守りだという石を握りしめながらその人の名前を
小声で呼ぶ。
その人は七色ちゃんに似て不思議な人だった。
俺をいつも気遣ってくれて優しくしてくれる。
俺の唯一の安らげる、安心できる場所を与えてくれた…。
俺はその人を愛していた、恋をしていた。
あいつはだから…っ。
また悲しい最後になってしまうのだろうか…っ。