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Re: 過保護すぎる兄と私とその他の人達!! ( No.60 )
日時: 2014/10/19 13:05
名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)


俺は、凜の家に来ている。
金持ちの家とでもあってやはり、高級感の漂う家。
外見は外国風であり、貴族みたいな城のような家である。
中に入ってみると、どの部屋もアンティークの家具でいっぱいであった。

「凜さん。本当に今日、泊って行っていいんですかね?」

「はい。もちろんです。今日は父も母も家にいませんから」
くすっと笑って言う。

話によると、急な都合で出張に行くことになったらしい。


それから俺たちは食事などを済ませ、一日を終えた。
もちろん、俺の念願の”したいこと”もかなった。


何日か経って、また俺は凜の家にお泊りをした。
そんなお泊りが何度か続いた結果、俺たちの間には……。

「慧さん……」

ある日のこと。いつものように大学に不法侵入をして、二人で食事中のことだった。
凜は、どこか真剣な顔をして話し出した。

「なんですか、凜さん」

もぐもぐと食べながら凜に顔を向ける。

「あの……私……、たぶん……できたようです……」

赤面してうつむきながら小さくつぶやいた。

「……できたって何がでしょうか?」

俺にあるものが浮かんだ。

「それは……」

おなかの下らへんをさすった。

「まさか……!」

そう、彼女に新しい命が宿ったのだ。

俺はたいへん、このことに喜んだ。

「やった……!俺の……子供……!!」

凜はふふっと優しく微笑みながら俺をみている。


でもこの幸福もこれが最後となった。


それから何月か経った。
凜は、姿を消した。
いや、外に出なくなったのだ。
俺はそれでも何とか、連絡をとれるよう、工夫した。

そこで連絡手段として使ったのが、手紙。
凜の家の近くでそれは行われた。

凜が最も信頼するメイドにその配達みたいなものをやってもらい、なんとか連絡がとれた。


手紙によると、凜にできたその子供は、凜の婚約者との子供だと凜の親族、家族は思っているらしい。
だから当然、その子供は、神楽坂家の人間となることは明らかだ。
性別は女の子。
女の子は、無理やり自分の好きでもない人と結ばれることになる。
凜はそれを嫌がった。
だから生まれた後、どうにかして逃がしたいらしいのだ。
生まれるまであと2か月。
俺とその子供で逃げてという内容だった。

「っ……」

凜は体が弱い。
子供ができてからというもの、凜はどんどん痩せていった。
だからそんなに体力はない。

凜も逃げることはできないのか……っ。
俺はそれが悔しかった。

たぶん、これが凜と会うのが最後になるだろう。
だからせめてでも凜の願いを聞いてやろう。


2か月後。
その陰謀……いや、逃亡計画は俺とそのメイドとの間ですみやかに行われた。

「慧様、この子です……。早く、早く……逃げてください……お嬢様の願いです……かなえてやってください……」

汗を垂らしながらいう。

「わかりました。凜に元気でと伝えてください」

俺は追ってくる者から無我夢中で逃げまくる。


とりあえず、俺は、自分の家へと駆けこむ。

「はぁ……」

息を整えながら自分の腕に抱かれている赤ん坊を見る。

すやすやと安らかに眠るその凜によく似た女の子の服にはその子の名前が書かれている。
刺繍で書かれている。
この刺繍も凜が縫ったのだろう。

『梓』

そう書かれていた。
由来は前に教えてもらった。

樹木の仲間でそれは弓の原料に使われていたらしい。
弓は強い。
だからその強さのように逞しく元気に育ってほしいという願いを込めたらしい。
凜は体が弱いからその子供には元気に強く生きてほしいのだろう。

俺は、すやすやと眠るわが子の名前を何度も呼び、声を殺しながら彼女が二度と母親と会えないのを悲しんだ。