コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: とったま!! ( No.2 )
- 日時: 2014/07/15 00:03
- 名前: かおる ◆D7srdkd1KM (ID: YC5nxfFp)
一階で誰かが騒いでいる気がする。
教科書を捲る手を止め、宏太は階段を降りた。
「うるさーいっ!!!」
御前がな、と言われそうな程の大声でリビングの扉を開いたこの少年がこの物語の主人公、高井 宏太(タカイ コウタ)である。
【#1 壁】
「………………あれ。」
騒がしい音の正体は、付きっぱなしのテレビであった。
向かいのソファーには、先程までテレビを見ていたであろう弟の祐也が規則正しい寝息をたてていた。
やれやれ、と宏太は一息つくと、其処ら辺にあった毛布を祐也に掛け、テレビを消そうとローテーブルに置いてあったリモコンに手を伸ばす。
その時、
バシーン……!
手とボールがぶつかり合う音がする。
ハッ、と顔を上げると同時にピッとホイッスルが鳴る。
ボールを落とした悔しそうな選手の顔がアップで映った。
ピッ。
またホイッスルが鳴り、黒と赤のユニフォームを着た選手がサーブを打った。
それを反対側のコートの選手が取り、一人がスパイクを打つ姿勢に入った。
「行けっ!!」
宏太は思わず叫んでいた。
きっと入る!そう思った瞬間、飛んだ選手がボール目掛けて腕を振り下ろした。
しかし
バンッ……
ボールは反対側のコートへ落ちずに、そのまま打った側のコートへ落ちた。
宏太は固まった。何が起きたんだ。
「ナイスブロック!」
声がした方を見ると、いつの間にか起きていた祐也が、手を叩いてはしゃいでいる。
ブロック。
その言葉に胸の中で何かが鳴るのを宏太は感じた。
「壁…………。」
宏太は小さく呟いた。
その時、けたたましくスマホが鳴る。
慌てて出ると、それは親友からの物だった。
『おい馬鹿!今何処だよ!?』
「何処って……、家………。」
『あ!?てめーが受験勉強でわかんねー所あるから教えろっつって図書館で待ち合わせする約束したんだろうが!あぁん!?』
ハッとして時計を見る。
午後十三時。
宏太は一気に思い出した。
今日、図書館で勉強する約束と、自分が受験生だということを。
慌てて部屋に戻り、大切そうな物をリュックに詰め込むとスニーカーを履いて家を飛び出した。