コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.102 )
- 日時: 2016/03/04 16:59
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「じゃあ、好きにここでくつろいで。私はあそこらへんで傍観決め込んでるから」
甘那が笑顔でそう言った。綺麗な笑顔だった。嫌な予感しかしない。
「え……? 甘那さん? それはえっと」
ユリが少し戸惑うと、甘那はポンッとユリの肩に優しく手を置いた。
「…………。…………。がんばれ」
「間が怖いです! 間が!」
「それじゃ」
ユリの訴えは無視され、甘那は部屋の隅へと去って行ってしまった。
「玲……」
じっと、ユリは玲を見る。
「なんだ」
「守って」
「やだ」
玲は即答した。
「いや、これから何かすごいカオスな事が起こりそうで嫌なんだって! 怖いんだって! 私、押しとかに弱いほうだから、というか! 見た目だけでも異色で、関わりにくい人たちなのに!」
ユリは周りに聞こえない程度の声量で、涙目になりながら玲に訴える。が、
「大丈夫だって。みんないろいろキャラは濃かったり、面倒くさかったりするけど、何とかなるから」
と、玲に言われてしまった。その言葉を聞いたユリは急に真顔になり、冷めた口調になった。
「さっき嫌だって即答していたやつの台詞じゃないよねそれ」
「何話しているのかな!?」
そんなところにズイッと、少し弾んでいるような声が割り込んできた。
「うわっ」
「おお」
いきなりのことだったので二人は驚く。
声の主をユリが見ると、その声の主の正体は、茶色の髪が綺麗な、肩まである髪をした女の人だった。
ユリがアジトに来た時に騒いでいた人の一人だ。確か、山梨大好き女って言われて喜んでいた人だ。と、ユリは思い出す。
ユリたちが驚いていると、女の人が意気揚々と自己紹介を始めた。
「初めまして! 咲乃ユリちゃん、だっけ? 私は詩生野 イア(しなまや いあ)だよ! 血液型はAB型! 年齢は一九歳! 山梨ラブで、山梨県のご当地物が大好きなんだ! 持っている能力は、浮遊だよ! 宙に浮くことができるんだ! 楽しいよね!」
「お、おお……」
ユリはこの弾丸トークに押されてしまった。さっきよりも一歩下がっている。ユリが助けを求めようと、玲がさっきいたの方向を見ると、玲の姿が見えなかった。
なので、首を動かさずに、目だけであたりを見渡したところ、玲は甘那のところまで逃げていた。
ユリはもう玲に期待するのはだめなのかなと、心の底から思ってしまったのだった。
「で、ユリちゃん!」
またズイッと、身体を寄せてくるイア。それに反応して、ユリはまた一歩大股で下がる。
「はい……」
「山梨県の一番知らてている、名前に信玄がついている有名なお土産のお餅は好き?」
「はい!?」
なぜここで? と、ユリは思う。だが、ユリが記憶を思い返してみると、確かこの人は山梨大好き女と言われていた。というか、自分で山梨大大大好き女って呼んでいいよ! と自分で言っていた。
「ああ、うん、味はおいしいですよね」
「ね!」
イアが嬉しそうにする。
「けれど、食べにくいです」
「あああ……」
ユリの一言でイアの顔が暗くなる。だが、すぐに明るくなった。というより、何かのスイッチが入った。
「でもね! これは食べ方次第で綺麗に食べれるんだよ!! まず、この包み紙! 無駄にでけえよ、何に使うんだよ……と、思ってすぐ捨ててしまいがちだ! だけど! これがこの餅のmagic item! 工場様がくれた、黄粉の魔の汚れから回避するものなんだよ! 使い方は簡単! ケースの下に敷く! たったこれだけ! あとは、黄粉ごと餅をパカッとおとしてしまう! たったこれだけ! これだけで黄粉の魔の汚れから回避できるのだ! さあ! あなたもレッツトライ!」
「おおお……」
ユリはなぜかわからないが、熱弁された。
「はい!」
すると、熱弁されたユリに、イアが勢いよく、何かを差し出してきた。
「!?」
ユリが驚きながらも、何かと確認すると、それはさっき話に出てきたお餅だった。
「どうぞ! 美味しいよ!!」
「あ、はい。ありがとうございます」
ユリはおとなしく受け取った。そのあと、イアは、
「じゃあ、私はあっちに行くから」
と言って、去って行った。