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Re: 能力少女 ( No.105 )
日時: 2016/03/24 22:36
名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)

「おい、そこのガキ!」

 メイドと執事の格好をした二人が去った後、そんな罵声がユリの耳に届いた。
 
「ガキ?」

 ユリはほんの少しだが反応した。が、気のせいということにし、少し疲れたのでどこかで休もうかと考える。が、

「おい! そこの玲の隣にいる白いワンピースを着たクソガキ! お前のことだ!」

 さらに暴言がエスカレートしてユリの耳に届いた。

「!? それって私のことですか!?」

「そうだよ、手前しかいねえじゃねえかよ、白ワンピを着た奴なんかよ!」

 ユリが声がした方を振り向くと、何か料理を持った一言でいうならヤンキー見ないな風貌の男の人が立っていた。
 因みに、その男の人はサングラスをかけて、金髪に染めたであろう髪をオールバックにしていたので余計にそう見えた。

「そうですけど、今日初めて会った人にクソガキって……。これでも私、十五ですよ?」

 ユリがそう反論すると、そのヤンキーみたいな風貌の人はさも当たり前のようにこう言ってきた。

「ガキじゃねえか。十五って今は四月だから、中三か、高一だろ? どっちにしたってガキじゃねえか」

「うぐっ。まあ、そうなんですけれど・・・・・・」

 そういわれると、認めざるを得ないユリだった。

「まあ、そんなガキにこれやるから食べろ。玲のぶんもついでに持ってきてやったから食べろ」

「まじで! ありがとう」

 そうして、男の人はユリと玲に食べ物を差し出す。白色の人の手のひらサイズの皿に綺麗に切り分けられ、扇形の綺麗な緑と見ているだけで涎を啜ってしまうような、チーズで色づけられた、煌びやかな黄色が皿を彩っていた。

「? これは、キッシュですか?」

 キッシュとは、パイ生地やタルト生地で作った器の中に、卵、生クリーム、肉や野菜などを加えてチーズをたっぷりのせ、オープンで焼き上げて作る料理のことだ。
 結構簡単だが、手の込んだものを作ろうとすると結構難しい食べ物で、ものすごく腹にたまる。
 男は顎をたてに動かす。

「そう、ほうれん草と俺が熟成させたベーコンを入れて焼いたものだ。食え」

「・・・・・・頂きます」

 ユリはおずおずと皿に一緒に置いてあったフォークで綺麗に一口分取り、口の中に運んだ。

「っち。美味しい」

 舌打ち交じりにユリが率直な感想を述べた。そこに玲が素直に

「めっちゃうめー! 愁哉さんの料理ってなんでこんなにうまいの」

 と、とても幸せそうな顔をしながらキッシュを頬張っている。

「・・・・・・これ作ったのあなたなんですか」

「おお、そうだぞ。あ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は紅佐凪 愁哉(くさなぎ しゅうや)だ。ここのアジトの飯を作る係で、能力は、触ったものの経緯を見ることが出来る。まあ、さっきお前たちが話してた璃柚ってやつと似たような能力だ。よろしく。で、味はどうだ。ガキ」

 愁哉はニヤニヤと、ユリを見下すように視線を向ける。それに対抗するようにユリは握ったフォークの速さはそのままで、対抗するように眼光を強くした。

「美味しいです。嫉妬するぐらいに。どの素材もちゃんと自分のいいところを出し切っていて、でも主張がそんなに強く無くて喧嘩もしていない。とても絶妙です。どうやったらこんなにおいしいの作れるのですか。今度作ってください。作っているのを見て盗みます。あと、ガキっていうの止めてもらえますか?」

「教えてもやうんじゃなくて、見て盗むのか。ガキはガキだろ。ガキにガキって言って何が悪い」

「はい。見るだけで十分です。私の応用力を舐めないでください。悪いです。というか、そんなに年齢も変わらないでしょうに」

「ほお、言ってくれるじゃねえか。俺の料理を盗むなんて、十年早いぞ。俺二十五、お前十五、俺のほうが年上。だからガキ」

 二重の意味で言い争っている二人の会話に玲がツッコミをれると同時に沈静させようと、声を挟んだ。

「十年で事足りる料理なの・・・・・・。というか、火花散らすのやめろ」