コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.114 )
- 日時: 2016/04/02 20:35
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
一方そのころ、ユリはちょっとした混乱に陥っていた。電話を切ったと思ったら、いきなり甘那が『全員、いつでも戦闘に行けるように! 各自準備を!!』といきなり大声で告げてきた為だ。
多分起きてはいけないことが起こってしまったのだろう。表情に焦りが見える。
ユリは今玲たちがどういう現状にいるのかを整理するために聞いてみることにした。
「ねえ、玲」
「ん? どうした、ユリ」
「玲たちってさ、今アニメとかで例えるとどこら辺にいるの?」
その答えは完結的で、ユリの予想以上のものだった。
「ん? 次週が最終回ってところかな? いや、それよりも1個前の回か」
「…………もう終盤じゃない!」
ユリは驚きを隠せなかった。これなら自分は正体をばらさずにひっそり生きればよかったのではないのか? という考えが脳内をべビに締め付けられているような感覚で支配していく。
「そうだよー。終盤だよ。ユリちゃんでてこなけりゃ結構穏便にことが済んだかもしれないのに」
「そうそう、どっかのアニメみたいに主人公が来た時が事の始まりとか思っちゃいけないよ。現実はそんなに甘くないよ。あ、かりんとう食べる?」
レオとイアのカタカナコンビがユリの傷口をえぐっていく。
「ううう……」
そんなときだった。何かの通信機を耳に当てていた誠仁が口を開いた。
「あ、やっこさん来やがった! 場所はこの間玲君たちが担当した市役所近くのビル街! 見回りしてる二人が交戦中だけれど、人数が多い! 璃柚ちゃんと紺くんは揺動のの為に、華理奈ちゃんは移動用と戦闘で行って! 応援が必要ならば要請を出して! ちゃんと戦闘能力がない人は武器を持って! ちゃんと戦闘服にも着替えてってね!」
「了解です!」
「承知しました!」
「かしこまりました!」
三人ばらばらのオーケーサインが室内に響く。どうやら、もう大騒ぎしている時間は終わってしまったらしい。しかし、ユリはこの事態を同行する権利は持っていないので、持っていた料理をせん滅するために、ご飯を頬張り始めた。
しばらくすると、ユリと、あと一人を残して室内はもぬけの殻になってしまった。
残ったあと一人とは、まだ中学にもあがっていないであろう少年だった。ショタだった。
ユリが大人たちを少年を置いていく時に聞いていた会話からすれば、まだ少年にとっては危ない環境で、少年の能力は不安定だから生かせるわけにはいかない。というものだそうだ。
小さい子に対しての配慮というものだろうか。それとも足手まといを置いていったということだろうか。たぶん前者であろう。
ユリは目の前の料理を食べきった後、少年に声を掛掛けようとした。が、
「ねえ、咲乃——ユリ、さん……」
その前に少年が声を掛けてきた。
ユリは即座に反応する。アニメでよく出てきそうなショタボだった。
「ん? えっと……」
「ああ、僕の名前は里上 子葉(さとうえ このは)です。この際だから話しますと、年齢は11歳で小学6年生です。能力は空間から物を取り出すことができる能力です」
ユリは目を見開いた。こんな少年がそんな能力を持っていていいのだろうかと思ってしまった為だ。
少年の見た目は絵にかいたようなショタ。ちょっと長いような黒髪に童顔。すっごくかわいくて、女装させても男だとわからないと思うようなひ弱さを体から醸し出していた。
「え、凄い能力持っているんだね」
「!? 僕の能力がすごい!?」
子葉は驚く。というか、ものすごくオーバーリアクションだった。内気な少年だとユリは思っていたが、どうやらそうでもないらしい。手の動きが偉大だった。
「え、そんなの驚く!? 凄いよ、使い方によっては最強能力だよ。あと、名前は咲乃ユリってフルネームで呼ぶんじゃなくて、ユリでいいよ」
「!?!!?!?」
ユリのその言葉にまたもや少年は驚く。ユリは確信した。この子はとても面白い子だ、と。
「え、でも僕は全然この能力は使い物にならないと思っていますし、それにユリさんってなんでも、森羅万象能力が使えるんですよね」
「おお、その年で森羅万象という四字熟語を知っているとはやるな。ん、っと、えっとね、まずさ、子葉くんはさどの感じまで能力が使えるの? よかったら私が日常に役立つその能力の使い方を教えてあげるよ。そうしたら、能力の性能だって上がるかもしれないし」
子葉の目は見開かれた。そのあと、喜々とした言葉が子葉の口から出された。
「本当ですか! マジですか! お願いしてもよろしでしょうか! 僕、みんなの役に立てるようになりたいんです!!」
この様子だと、熱意は相当のものだとユリは瞬間的に察することができた。
「じゃあさ、どういうものまでならば出せる?」
「えっと、最大でドールハウスぐらいなら」
そうして、子葉は何もなかった空間から突然現れた青白い光の中に手を突っ込み、本当にドールハウスを出してきた。大きさに例えるのなら、勉強机によくついている椅子を横にしたぐらいの大きさだろうか。
「かわいいね。あ、結構でかい」
そしてユリは思った、なぜドールハウスを出したのか、と。結構煌びやかな飾りが目に映るが、この細かさを見るあたり、結構な威力も物のはずである。これが弱いのならば、どこ基準で弱いと思っているのか気になるのが人間のさがみたいなものである。
「ははは、いや、でもあれですよ。甘那さんに比べたら全然の威力なんです。あの人はやろうと思ったらアジア圏から人間を一人取り残さずいなくさせることができますからね」
「ああ、なるほど……」
それは比べてはいけないことだ。
「まあ、あれだね。わかった。子葉くんは結構な欲張りさんなんだね。みんなの力になりたいってことは、武器みたいのが出したいってことなの?」
「……はい。できれば」
「じゃあ、カッターとかはどうかな。結構地味に効くよ」
「大きさちっさくなってません?」
「うぐっ、だってこんなちっさい子に殺傷なんてさせたくないよお姉さんは! それか麻酔銃を出しなさい! 殺傷なんてダメ、絶対!!」
子葉に的確なところを指摘されて涙目になりながら、ユリは凶器を断固拒否した。あと、だすならば、日常的に使える文房具を出せとも言った。
「さっきと言ってることがめちゃくちゃです……」
ユリはそのあと少年に麻酔銃の打ち方を伝授したのだった。当初の目的など思い出せないほどの鬼教官になって……。