コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.115 )
- 日時: 2016/04/06 16:18
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「ただいまー」
ユリが麻酔銃を子葉に仕込み終わった後、少ししてから玲たちはとてもくたくたに枯れていると表現ができるほどに疲れ果てながら帰って来た。
「「……お疲れ様です」」
その姿にユリと子葉はただただ押されるだけだった。
外傷は見当たらないものの、全員顔が暗くまるでお葬式状態だった。
「玲、そういえばさそのさ、なんで無傷なのになんでそんなお葬式状態なの?」
それは、玲ではなく、別の人間によって答えられた。
「ふっ! 愚かな人間よ、玲の代わりに俺が答えてやろう。それはだな、ただただ相手が能力だけに頼らなくなったのだ」
「あっ……」
ユリはその玲の代わりに勝手に答えてきた風馬の態度と言い方にとてもムカついて、最初の一言ですべてを察せられたものの、おとなしく聞くことにした。
「そう、奴らはもう能力だけでも厄介なのに爆弾やら拳銃やらもうやりたい放題なんだよ。あの戦闘用スーツを着てなきゃ全員即死だ」
「戦闘用スーツ?」
「ああ、そのスーツは子葉が能力で作ってくれた服なんだが、着ると負傷しても血も出ないし、脱いだら負傷していたのがうそのように治っているという凄い代物なんだ」
それは私があの時あった玲が着ていたものだろうか。たぶんそうだ。あれは、あの異様な光景は——そうでしか考えられない。
「……そうなんですか。凄いですね。でも、なんでみなさんそんなに顔が暗いのですか?」
「それはだな」
「それはね、ユリちゃん」
その時、風馬の言葉をまた違う人が遮った。甘那だ。
「落ち着いて聞いてね」
「? はい」
甘那の顔は帰って来たメンバーの中で一番暗くなかった。予想の範囲内とでも言いたげな表情だ。まるでこうなることを知っていたとでも言いたげな、表情だった。
「ユリちゃんの存在が、敵対してる組織にばれた」
「それまた面倒な」
しかしユリは驚かなかった。これもまた予想していたとでも言いたげなものだった。
「驚かないんだ」
「私地獄耳なんで」
ユリは目を遠くにどこに視線を向けているのかわからない、雲のように掴みどころのない表情と声を表に出した。その反応はさすがに予想外だったのか、あたりに異様な雰囲気が出てくる。
そして、甘那はあることに気が付いた。
「もしかして、電話、聞こえてたの……。あの距離で」
まさか、ありえない、と甘那は呟く。
あの時途中からではあったが甘那は部屋を出て廊下で電話をしていたのだ。そんな状況で聞こえるなんてありえない。
「はい。私は地獄耳なんですよ。自分でも嫌気がさすくらいに。能力なんて使わなくても、いろんな音が聞こえてきます。まあ、私の歩んできた道がちぐはぐで歪過ぎたのが原因でしょうね」
「体制みたいのがついてしまった、と。そういうこと?」
「はい」
「あなたはすごいね」
「化け物だ、と言ってもいいんですよ? この言葉は言われ慣れていますから」
ユリは悲しそうに、不敵に笑う。とても悲しく、憂いをまとって、笑う。とてもその表情は齢15の少女が出せるような表情ではなかった。
この娘はいったいどういった人生を送って来たのだろうか。リナに話してもらった以上に辛いことがこの少女の身には起こっているのかもしれない。そう甘那は思わずにはいられなかった。