コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.116 )
- 日時: 2016/04/06 18:10
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「……孤立した」
そうユリは溜息と共にその言葉を吐き出した。
「こういうことはよくあるんだけれど、初日からやらかすだなんて思わなかった。やってしまった。一応甘那さんはそのあとに私が今いる状況を話してくれたけれど、少し怯えている風だったし、そのほかの人たちも……。やっぱり、私は、要らないのかな……化け物なのか」
言葉に出して思いを吐いてもユリの後悔は募っていくばかりだった。
(リナ……。怖いよ……自分が、怖いよ)
自分はそんなに強い人間ではない。この性格のせいで何人もの人間を傷つけ、逆に傷つけられてきた。
人間不信になったのは親が私のせいで私の目の前で殺されそうになったから。瀕死の状態の親は見るに堪えないものだった。嫌だった。自己嫌悪。
こんな状況でもユリは涙は流していない。ずっと瞳で虚ろを捕らえているだけで、瞳には何も映していない。
「玲もさすがに今回の私には気味悪がるかな」
まだ組織に建物内にはいるものの、ユリに周りには人間は1人もいなかった。
——化け物
この言葉はユリの胸に刺さったまま消えはしない。ずっとそこに刺さったまま生きて行かなければならない。レッテルを張られたようなものだ。
「……辛ぇ。これから何をしようか。姉の居場所は解ったから取りに行くか。そして私は——私は」
——どうしようか。
そう思った時だ。
「ユーリーちゃん!」
ある女性の声が聞こえてきた。
ユリが見上げると、そこにはイアがいた。
「すっごいなんとも言えない顔してるね。にしてもすごいね、超能力使わなくても超能力を使ったみたいにいろんなことができるなんて。完璧超人じゃん。ね、愁哉」
「そうだな。というかお前どんな顔してるんだよ。しけた面しやがってよ。これだからガキは」
その言葉にピクッと眉を動かす。どうやら何かが気に障ったようだ。
「ねえ、愁哉さん? 今なんか余計な言葉が聞こえましたよ?」
「んだよ、元気じゃねぇかよ。こんな隅っこでソファーにも座らずに壁に寄りかかって黒いオーラを醸し出しているから心配したじゃねーかよ」
「……?」
ユリは愁哉の言葉に首を傾げた。愁哉はとてもめんどくさそうにしかし少し優しい顔つきをしていた。隣のイアはとても楽しそうだ。
なんで楽しいのかは謎だ。
「何お前首傾げてるの」
「私心配されるようなことしてない……っ痛ったぁ! え? なんで私今拳骨されたの!? え!? 私何かしましたか!? 言いましたか!?」
「言ったよー。ユリちゃんー。ダメだなー、自分のこともっと大事にしなよ」
ユリの頭にははてなマークが山ほど浮かび上がった。どうやら本当にわからないらしい。
「だからさ・・・・・・」
イアがあるところを見ながら、一言いうと、そのあとある人物にその続きを譲った。
言葉を譲られた人物は、真剣にまっすぐにユリを見ながら言葉を紡いだ。
「ユリは俺たちの一員なんだから大丈夫だよ。誰もお前のことを嫌いにならない。化け物なんて思わない」
「玲……。そんな真面目に言ってくれるとは思わなかったよ」
「え」
「だってさ、私が玲のことを信用してないってことも4年も暮らしてて気づかなくてそれを知ってもなお少しおちゃらけてた玲なのに……。これはずるい。どうせリナから私の秘密もいろいろ教えてもらったんでしょ?」
「ぎくっ」
「自分で言うな自分で。でも、うん。あの、ありがとうございます」
ユリは深々と頭を下げ、玲を言った。そのあと、顔を上げた時には大粒の涙が溢れだしていた。
ユリが泣いたのは4年ぶりだった。
**
ユリが泣いた後、ひと段落してから甘那と垣根からこれからやることについて話をされた。
ユリが脳内で纏めると週末にとある遊園地に行くらしい。そしてそこには私と同じような人間が芸能人の活動としてだが来るらしいのだ。
同じような人間とは回りくどい言い方だ。私と同じ能力を持っている人間だ。わかりやすくすると。しかし、その人間は今は能力を失っているらしい。だが、それでも見放すわけにはいかないので保護をするという名目で接触する。
だけれど、そこには玲たちと敵対している組織も来るらしいのだ。
甘那さんの感ではその時がもしかしたら最終決戦になるという。私も行くし。
それまではここでダラダラしてていい。と言われた。
「よし、じゃあこれからどうする?」
私に話し終わった甘那は意気揚々と楽しそうに私に話しかけてきた。因みに机に並んでいた愁哉さんお手製の料理はすべて組織に人間の腹の中だ。
と、その時組織の玄関の扉が勢いよく開くとともに、とある女性の声が聞こえてきた。
「れえええええええええええええええええええええええいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!! ちょっと顔かせえええええええええええええええええええ!!」
「げっ姉貴!?」
すぐさまその怒りの標的となっている人物、詠記玲は驚きの声を上げた。それと同時にみるみる顔が青くなっていく。
「お前私が海外研修で海外に行っている間に何ユリちゃんを入院しなくちゃいけないぐらいの負傷をさせてるんだよこの野郎!!」
青色が混じった肩まである髪の毛がゆらゆらと揺れる。かわいらしいお人形みたいな顔も今は怒りで鬼となり果てていた。
「え、待って姉貴。これには訳が……」
玲は後ずさりをしながら必死に訳を話そうとする。が、その声は姉貴と呼ばれた人物から発せられた言葉によってかき消される。
「お前たちの行いに巻き込んだだけだろうが」
「…………すみませんでした」
玲は粘りを見せずに敗北を認めてしまった。
そんな時だった。
「あ、氷菓さんだ。お久しぶりです」
そんな彼女にユリはしれっと挨拶する。
そうすると、ユリに氷菓さんと呼ばれた玲の姉らしき存在は鬼のような形相がうそのように天使のような笑顔をふりまいてきた。
「!! ユリちゃん! 大丈夫なの!? 血を出して倒れて病院に運ばれたって聞いたけれど!」
「大丈夫ですよ。今はこの通り元気ですし。あと私の不注意っていうのもありましたからね」
「そっか、ああ・・・・・・天使だぁ。我の天使だぁ」
そうして事態は収まった。