コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.119 )
- 日時: 2016/04/16 18:05
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
そして、数日後……。
「遊園地なんていつぶりなんだろう。玲、すごいね。なんだか時代の進歩を感じる。というか人がいないね」
ユリたちは遊園地に足を踏み入れていた。
ユリの今日の服装は白ワンピではなかった。白のシャツにワインレッドの短パンでニーハイ、そしてその上に白いロングコートを羽織っている。靴は黒のミリタリーブーツだった。
玲は白の無地のTシャツにジャケットを羽織り、ジーパンをはいている。靴は運動靴だ。
因みにいつでも戦闘態勢にいは行ってもいいようにもうあの負傷しても血が出ない体になっている。
「おお、凄いな。甘那が能力使ってるからな。対象者は一般人で絶対来ないようになってる。じゃあ、こっち行くぞ」
しかし、今日は遊園地では遊ばない。遊ぶ者もいるが、それは主に戦闘に向かない能力を持つものだ。
ユリは本当は遊ぶ予定だったのだが、玲が保護者ということで、遊ばないで甘那と共に別行動をすることになった。
「遊ばないでぶらつくだけだとか……」
ふてくされているユリを甘那が宥める。
「まあいいじゃない。ユリちゃん。芸能人が見れるんだよ? いい事じゃん」
甘那も同様玲と共に特殊な体になっている。青色のロングTシャツに七分丈の黒のズボンで靴は黒のスニーカーだ。
宥められたユリは眉を八の字にする。
「それはそうなのですが」
ただいまの時刻は午後5時。もうすぐ日が落ちる時間だ。観覧車などのアトラクションには着々と綺麗な光が灯り始めている。とてもこれから殺し合いともいえるようなことが始まるとは思えない光景だ。
「——もしもし、聞こえるか」
その時、耳元につけているある機械から声が聞こえてきた。ユリを含まない2人は真剣な顔つきになり、会話を止め、耳元についている機械に小さく返事をする。
それを確認されてからいつものテンションは皆無な男性の声が聞こえてきた。
「垣根だ。対象者発見。やはり能力の数値はゼロに等しい。だが、完全には消えてはいない。暁と桜庭ともに監視中。場所はAジェットコースター、舞台付近だ」
「——了解」
「早いですね」
機械を付けていないはずのユリが会話が終わったと同時に甘那に話しかけてきた。
甘那がユリを見ても機械は付けてないのは一目瞭然だった。
「おお、ユリちゃん能力でも使ったの?」
「いえ、ただ二人同時に何か決意を決めたような顔つきになったので、話は終わったのかなと思っただけですよ」
「なるほど。よく見てるんだね」
「人間不信の後遺症というものですよ」
ユリは何か遠いものを見るようにする。話してるうちにも空は光を失っていく。
「とにかく向かうぞ」
玲は話を中断させ、垣根から報告を受けた場所に2人の足を向かわせた。
***
「お、来たね」
ユリたちがついたときには垣根の近くに今回の保護対象となる物がいた。
「うわ、本物だ……」
玲が感嘆の声を漏らす。
今回の保護対象者の名前は北条 焔という。ピンクのとても長い髪に紫の目、整った鼻、口、とても綺麗な美少女だ。歳はユリよりも2こ上の17歳。アイドルというものをやっていて、結構な人気者。
今日この遊園地に来たのも仕事で来ていた。それを知ってここにユリたちは来たのだ。
だが、この少女にはある面倒なものがあった。
「やっぱりこの少女は記憶喪失なのですか?」
甘那は少女をまじまじと見てから垣根に質問した。
「ああ、本当みたいだよ」
そう、記憶喪失。記憶がこの少女にはなかった。それどころか——。
「それに、自分の過去の姿を知っている人も物もないそうだ」
「噂通りってわけですか」
甘那は溜息をついてから少女に話しかけた。
「ねえ、焔ちゃんあなたってさ自分に超能力があるって知ってる?」
「一応知っていました」
「そうなんだ。でも記憶喪失になった時にはその能力は無くなっていたって聞いたんだけれど……」
「はい、なかったです。でも、記憶喪失になった時に私の手の中に握られていた手紙に私の必要最低限の情報が書かれている紙があったんです」
「なんでそれが自分のだとわかったの?」
「それは、時代が古いかもしれないけれど、血判が押してあったのですよ。自分の手を見たら人差し指に傷がありました。ちゃんと調べてもらったら指紋も私のと一緒で」
「なるほどね。わかったありがとう」
一番聞いとかなければいけない事を聞き終わり、焔から視線を移した。
「じゃあ、何も起こらないうちに帰るわよ。焔ちゃん、これから仕事は無いのよね」
「はい。無いですよ」
焔はかわいく微笑んだ。
ユリはその光景を見ているとき、ずっと頭を傾げていた。何かが頭を這いずり回るようにしているのだ。自分の存在に気づけ! と言いたげに。自己主張が強い。だが、その原因がわからない。わからないのだ。
しかしそれが直感的に過去の出来事だということだと思った。だから昔のことを思い出している。だが、解らない。
そんな時だった。
「あ! 見つけた! 北条焔!」
甲高い声が聞こえてきた。
その声を聴いたときに組織の人間全員の顔は落胆した顔つきになった。どうやら面倒事は起こってしまったようだ。
「おお、いたいた。闇ナイス」
そのあとに若い男の声が聞こえる。
「おお、テレビで見たまんまだな」
「すっごくかわいい」
「私は付いてきてよかったのでしょうか……」
「いいんじゃないかな?」
言っていることは十人十色のようで、緊張感が全くない。それどころか、一部のものを除いてこれから戦うのが楽しみでうずうずしてしている。
一方その様子を見て組織の人間はとても嫌そうな顔をしていた。
「マジかよ」
「おい、これは戦闘態勢に入った方がいいのか」
「そうだな、入った方がいいと思うぞ。まあ、俺様にとってはk」
「玲君、ユリちゃんを護衛して! 甘那ちゃんは焔ちゃんを!」
「わかりました」
「承知しました」
望まない戦いに今火が付いた。