コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 能力少女 ( No.120 )
- 日時: 2016/04/20 20:15
- 名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)
「ねえ、私の相手は誰がしてくれるの? あ、あああああああああああああああ!!」
すると、闇はいきなり大声を出した。
「な、なんだ!?」
玲はその異様ともいえる反応に驚き、少女の視線の先を追う。そこにいたのは——
「咲乃ユリ! 生きてた!」
「!?」
これにはユリは驚いた。この少女とは面識がない。初めましてだ。なのに自分の存在を知っている。ましてや、自分が生死の境目にいたことを知っているような口ぶりだった。
ユリがよく見るとこの前、自分を玲の知り合いだと知って襲撃してきた人間がいることに気が付いた。
「まずいな、これは」
無意識に声が漏れる。そして、その次にあるものをユリの目は捕らえ、思考回路は止まってしまった。そのとき、
「ユリ、行くぞ!」
少しユリが動揺したのが分かったのか、玲はユリの手を掴んできた。
そして、逃げようとした。が、ユリは動かなかった。玲がユリの顔を見ると見たことがないくらい顔を真っ青にしていた。
「ねえ、玲」
ユリの声が震えている。まるで何かに怒り、何かに怯えているみたいに。
そして、敵のある人物に向かって指をさす。
「あの、スーツの上に白衣を着ている奴の名前……知ってる?」
「あ? あいつの名前は灯村城 乱舞(ひむらぎ らんぶ)あっちの組織のボスであそこにいる好戦的な少女黒咲闇、旧姓灯村城闇の父親だよ」
「そうなんだ、ありがとう」
ユリが失笑を漏らす。
明らかにユリの表情が歪だ。とても歪んでいる。玲の目ではいろんな思いが爆発しているように見えた。
そこにその男の声が来た。
「おお! 君が咲乃ユリちゃんかい? お久しぶりだねー。4年で結構大きくなったね。やっぱり子供の時間の4年は大きいのだな! というかさ、君のお姉ちゃん一向に目が覚めないんだけれどなんでか知ってるー?」
「隠す気はないのかよ」
ユリの顔はいつの間にか呆れたような顔になっていた。
玲はリナの話をなぜか思い出してしまう。
——スーツの上に白衣を着たいかにも真面目そうな風貌——
——とにかく、狂っているように私は見えました——
彼女はそう話していた。玲は白衣の男を見る。
「ないよ。君は相変わらず面白くないね。昔と何も変わらない。もっと変わってよ! 俺がつまらないではないか! そうだね、人間が信じられなくて、とっても根暗な子になるか、すぐ暴力を振るうことかになってほしかった!」
乱舞は不敵な笑みを浮かべた。それに比べてユリは無表情だ。なにも顔からは思っていることは解らないことは両者ともに同じことだった。
「私は変わったよ。そして、どうやら私はここには来てはいけなかったようだねー。あー。めんどくさい」
「ユリ、それってどうい——!?」
その時に組織の誰にも予想はしていなかったことが起きた。
甘那の隣にいた少女が、甘那を斬り、ユリに斬りかかってきたのだ。その少女の手には日本刀に似た剣が握られていた。
「!!? 甘那! ユリ!」
玲は今起こった出来事に戸惑いを感じながら襲われた2人の安否を確認する。
ユリは一撃をギリギリで避けていたが、甘那は気づくのが遅く、ザックリとやられていた。あのスーツを着ていなければ、もうこの世にはいなかっただろう。
「おお、ビンゴだ。あと、やっとわかった。頭で這いずり回ってうっとおしかったものが。あーすっきりした」
ユリは何度も繰り返し振るってこられる剣を余裕で避けながら、焔に向かって笑みを向けた。
「そっち側の人だったのですね」
「ええ、そうよ」
あっさり自分の一太刀がかわされ、そのあとやみくもに振るった剣さえも余裕でかわされてしまった焔は舌打ちをしてから少しユリから距離を取る。が、それでも戦闘態勢なのは変わらないようで、焔の身体からはユリに対する殺気が溢れ出ていた。
その様子を見てユリは溜息をついた。
「演技をするのならもう少し粘った方がよかったと思いますよ。アナタ芸能人なんでしょう? 訓練されているはずなのに、焦りましたか? どうせ私を殺せばあなたの記憶は取り戻せるとか言われたのでしょう。まあ、あながち間違ってないとは思うれけど……。うーん。これだとどっちが正義でどっちか悪だかわかんなくなるな」
この状況を見て、ある人物がユリに罵声とも取れる質問を投げつけてきた。
「おい! 貴様! どういうことだ、説明しろ!」
「風馬さんえっと、これはなんていいましょうかね。手っ取り早く言うと焔さんは裏切り者ってことですよ。いや、これは操られているだけですね。垣根さん」
「なんだい、ユリちゃん!」
垣根は甘那の様子を見終わった後に、元気よくユリに返事をした。その行動の速さにユリは少し感心しながら質問する。
「あの白衣の人って何の能力者ですか?」
「人心掌握だよ! 身体の状態を見ることができるんだ」
「やっぱりそうですか。ありがとうございます」
彼女は垣根に向かって一例をする。隣にいる焔など眼中にないように。
しかし、組織の人間は訳が分からないと言ったふうに首を傾げる。
「? どういうこと? ユリ」
玲はユリに尋ねる。それにユリは少しだけ曖昧に説明を始めた。
どうやら彼女もそこまで確信は持てていないらしい。
「催眠術じゃないかな。たぶんだけれど敵さん全員催眠術かかってるよ。結構協力のものが。人の弱みを見つけるほどかけやすいからね。隙間が生まれて。そこに砂を入れ込むようにしてやると結構がっちりとかかってくれると思うんだよ。玲も気を付けて。人心掌握をやられると玲だってあっち側に行きかねない」
「うわ、マジかよ」
「マジだよ。とりあえず甘那さんをどうにかしないと……ってうわっ」
いきなり隣から来た剣をユリは声とは裏腹に余裕でかわした。全く焦りが見当たらない。それに剣を振った者、焔が舌打ちをする。
「っち、あなたは後ろに目でもついているの? でもまあ、これからはよそ見してると危ないわよ」
「いきなり刃物を私に向けないでくださいよ。そこまでして記憶がほしいのですか? あなたはそれで幸せになれるのですか?」
「知ったことを……。やっぱりあなたは灯村城さんの言った通りだわ。あなたは、能力を弄んで人を甚振る悪魔だ」
その言葉の後、焔は倒れた。