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Re: 能力少女 ( No.129 )
日時: 2017/04/02 00:55
名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)

 大きい、ごつごつとした、それでいでやせ細って骨の形が剝き出しの手が、凍っていく。
 それはだんだんと腕に渡り、胸を、胃を、股を、足を凍らせていった。
 その現状を体験している男性は信じられないといった表情でその現象を起こしていいる、真っ白いワンピースを着たか細い少女を見ていた。

 あの少女は彼の中ではただ姉の背に隠れ、けれどムカつく虚勢を張り、いつだって姉がいなければ何もならない奴だったはずなのだ。それなのに……そんなはずだったのに。

 ——なぜ。

 灯村城の脳内には彼女のことで埋め尽くされていた。資料で見たとき、初めて会った時、二度目にあった時、そして今日。どこに彼女がこんな力を秘めているか書かれていた。記憶にしていた。
 答えは。

 ——なかった。

 記憶にも、記録にも、何も残っていなかった。絶対にあるはずのもの。こんな絶大な力ならばどこかにあってもいいはずだ。それがなかった。
 ということは。

 ——彼女が自らすべて抹消していた。

 そういうことになるのではないか。


 まさか。そうおもう。が、否定しようにも、否定できない現象がい今まさに自分の身に起こっている。
 この、か細い手から、真っ白い華奢な体から流れ出た異能によって。自分は氷漬けにされている。ほら、今にも死にそうだ。殺されそうなのだ。ただのガキだと侮っていた少女に。

 ——?

 ————??

 ——————????


「ユリ!」

 パシッと彼女の手が誰かの手によって自分から引き離された。
 手を離した誰かはそのまま彼女をまるで正気に戻そうと試みているように、激しくユリに訴えかける。

「ユリ! いくら親の仇だろうが、妹の仇だろうが、殺しじゃだめだ! 殺したら、殺したらこんな奴と一緒になる! だから……だから!」

「玲……」

 怜。そう呼ばれた青年は彼女の表情を見て、あっけにとられた。その光景に不思議に思ったのだろうか。空気も読まずにわらわらと彼女の周りにこれまで戦っていた者たちが不思議と集まってきた。

 その行動に彼女は抑えきれないといったように、さっきまで残念そうな真顔をっぷっと吹き出して笑顔を作った。

「別に、殺しはしないよ。いくら仇でも。いくらさっき私の姉を操ってそれで殺そうとしたやつでも。殺したらつまらないじゃん。殺すギリギリのところで絶対に気絶しないところの一番もどかしいところで寸止めして十分ぐらい我慢ごっこをくらわそうとしていただけなのに……ククク……玲……マジな……顔……っぷ……。あ、ごめん。ここ笑っちゃいけないところだよね……」

 そんな彼女の残念な笑い方を見て、反応を見て玲は死んだ目つきで、呆然として何とも言えない敵のボスを見てから呟いた。

「あー、こいつ心の底からのドSだったわ」