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Re: 魔砲少女 アイン 〜GOTT KUGEL〜  ( No.2 )
日時: 2014/09/13 16:30
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 0i4ZKgtH)

 2話 




 
 三角飛びで建物の壁側面を蹴り上げ、空中に躍り出る黒髪の少女アイン。

 眼前に構える。

 煌びやかかつ重厚な装飾の黒金の古式銃。

 眼前に捉える。

 傷口から腐臭がする体液を撒き散らし暴れる醜い汚物の塊。

 「汚たねえ化け物が・・・今、ぶっ潰してやるよお!」

 そして少女は自らの身体に術式を展開する。

 「いくぜ! 魔武装ディアンブル・アムズ!!」

 出現する魔法陣。

 光を帯び、衣服は分解され一糸纏わぬ裸身となる少女。

 浮かび上がる幾何学模様。

 流れ走る幾つもの魔術文字の羅列。

 それらが少女の頭、肩、腕、胸、腰、足を、駆け抜けると次々と全身に黒い装束の戦闘服が瞬時に装着される。

 同時に腰にフリルをあしらいつつも可愛らしいスカートが現れ、少女のか細い首元に漆黒のマフラーが現出し、たなびいた。

 魔光を掲げ、魔砲を狙い定める。

 その少女の名はアイン。

 魔砲少女アイン。

 「不浄なる者諸共に貫け、我が愛銃『死黒天使ダクシェル・ダムドエンゼルン』」

 囁きは濃密な魔力となり装飾銃に魔導が籠もる。

 禍々しくも美しい黒色の古式銃。

 まるで生命が、意志が宿るかごとく呼応し凄まじい魔力の共振を引き起こす。

 黒衣の少女アインが己の手中の荒れ狂う奔流を無理矢理押さえ付ける。

 自身さえも飲み込みそうな強大な力、なのに表情は愉悦を浮かべる。

 嗤っている。

 とても楽しそうに。

 「食らえ、化け物。永劫の呪牢へ。喰らえ、分身。空かした腹を満たしてやる」


 湧き上がる破壊の衝動。


 全身に込めた波動を両手へ、指先へ、その引き金へ。







 「断罪の無限獄殺ギルスティン・インフィニ・ヘイルシュトロム!!!!!」









 撃ち放った。

















 暗黒の閃光。

 どこまでも黒々しく雄々しく猛々しく。

 どこまでも無情に無慈悲に獲物を狩り尽くす。

 死神の鎌。

 逃れることは出来ない。


 降り注ぐ闇。

 断末魔。

 異形『業魔』は夜より暗く、太陽の輝きよりも灼熱と化したヴェールに飲み込まれ賎しい自身の存在に永遠に幕を閉じた。


 
















 いつもと変わらぬ夕刻の時間帯。

 人々が行き交う街並み。

 人間は曖昧にその生を生きる。

 己が生贄にえとなる事実も知らずに。

 無知ゆえに。

 無力ゆえに。

 ときにその深淵を覗き、垣間見る。

 そして知る。

 闇に蔓延る隣人たちの素顔を。





 

















 電波塔の避雷針に立つ黒衣の少女。

 漆黒のマフラーが風に煽られ靡く。

 その肩に白い奇妙な生物。
 
 「・・・ひとつ疑問、奴等は一体何匹いるんだ?」

 少女アインが可愛らしい声を発し、謎生物に聞く。

 「ん? 『業魔』かい。アレに数の概念は当て嵌まらないよ。幾らでも湧いてくるからね」

 さも当たり前の様に答える謎生物にアインは盛大に溜息を吐く。

 「はあ・・・傭兵やってた頃が懐かしいな。毎回グロ怪物相手は正直SAN値がレッドゾーンだぜ・・・」

 「でも君の望み通り戦いが満載の世界だよ。不満かい?」

 ヌイグルミの様な感情が籠らない小さな目で窺う非ウサギ型物体。

 「いや、形はどうあれ俺、じゃない『あたし』は割と楽しいよ? このイカれた世界。結構慣れてきたしこの体にも抵抗無いし」

 そう言い古式銃をクルクルと器用に指先で回すアイン。

 「なら良いんだ。君の様に適性が凄く高い素体を回収出来て僕のランクも上々だしね。これからも・・・ん? 業魔反応が出たよ。それも複数」

  ウサギ型生物の長耳がピコピコと遠くの街並みを指し示す。

 「了解! 速やかに業魔を浄化、殲滅する!!」

 一際高くジャンプし、跳ねるように建物を伝い移動する少女。












 人知れず此の世ならざる異形を狩る者。
 
 其の者、見目麗しき美しき超越の狩人。

 何時しか誰かが彼女らをこう呼んだ。





 『魔砲少女』と。