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Re: 魔砲少女 アイン 〜GOTT KUGEL〜  ( No.3 )
日時: 2014/09/13 16:31
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 0i4ZKgtH)

 3話 





 『業魔カルマ


 人外の領界にあると同時に、すべての生物の天敵と言える存在————。


 異能異端の力を有し、深淵の波間に漂う空虚なる混沌の落とし児。


 それがもたらすのは絶対的な絶望。


 だが、その万物虚無を討ち滅ぼす者たちが現れた。


 『魔砲少女』

 
 その幼い躯の奥に絶大な力を宿した可憐な少女たち。

 
 並み居る異形を微塵に灰す無頼無双な乙女。


 果たして彼女たちは何者なのか?


 様々な出会いと別れを繰り返し、交わり紡いで奏でる唄物語。


 魔砲少女という名の少女たちが織り成す間奏曲インタールードが今宵も華麗に響き渡る————。
















 デハ、幕間劇ヲ始メマセウ。





 




 

 
 









 ・・・・・・・・・。










 ・・・・・・。










 ・・・。



















 走る。

 ただひたすらに走る。

 少女は走り続けていた。

 無我夢中で。

 逃れるために。

 未曾有の恐怖から。

 追ってくる。

 己の背後から感じる身の毛よだつ魔の存在が。

 今にも破れそうな心臓の鼓動を無視し、迫る怪異から必死に逃げる少女。

 暗闇に包まれた静まり返る森林公園。

 後悔。

 少女の胸を悔恨が拭う。

 近道なんてしなければよかった。

 いつもの帰り道を通ればよかった。

 部活帰りの遅い帰宅時間。

 ふと訪れた夜の森林公園。

 昼間はそれなりの人で賑わう憩いの場。

 しかし今は静寂が支配する何処か非現実な空間。

 何故、此処を抜けようとしたのか。

 確かに自宅までは近道だが此処はマズイ『噂』があった。

 人が浚われる。

 消えてしまうのだ

 唐突に、忽然と。

 いわゆる神隠しだ。

 だから極力ここには近づかないようにしていたのだ。

 特に夜は。

 なのに。

 学生服が子藪の枝に引っ掛かり破れるのにも構わず少女、遠野葉子は月明かりが僅かに差し込む森の最奥へと遮二無二に駆ける。

 振り返る。

 自分の後ろ、暗澹の底から『異様な何か』が刻一刻と距離を縮めるのを肌が刺すような冷気を受けて粟立つ。

 「はあっ! はあっ! はあっ!」

 息を切らせ何処をどう走っているかも解らずにただ、追手から逃れようと懸命に逃走を試みる。

 「きゃあぁっ!?」

 瞬間、何かが勢いよく少女のか細い足に絡みつきバランスが崩れ、強かに地面に身体を打ち付けた。


 「ううぅ・・・な、なに・・・?」

 葉子は己の足首に捲き付くそれを見て、更にそれが伸びる先の部分を見上げ息が止まりそうになった。

 「ひぃっ!!?」

 異形。

 何かの肉の集合体。

 よく見ればそれは所々脈打ち、何らかの生き物を想定させるが、少女には眼前の怪物に悠長に見識を分する余裕など微塵にも無い。

 「あ・・・ああ・・・ああああああ」

 ガクガクと壊れた人形のように震える少女を眼の無い双眸でまるで品定めをするかのごとく怪物は見詰める。


 そして————。

 「いやぁああああああああああああああっっっっっ!!!!!!!」

 無数の触手が異形の肉間から盛り上がり出でて少女の全身を絡め取った。

 悍ましい、ぬめる生臭い肉の触手が服の隙間から侵入し、直接肌を撫で付け這い回り犯す。

 「助けっ!!・・・うぶぅお!? おえええぇえっ、むぐぅうっっ!!!!」

 小さな唇を割り開き、太い肉塊がこじ開け喉を蹂躙する。

 声にならぬ声で咽び泣く少女をいたぶるように異形はこれでもかと少女の肉体を荒々しく嬲り、締め付ける。


 最早少女の命運も尽きたか。


 逃れ得ぬ汚辱の魔手に肉も魂も堕ちてしまうのか。


















 「否。貴女の命はここでは尽きない」







 






 稲妻が飛来し轟雷が奔る。



 異形の触手がたちどころに寸断され、瞬時に消し炭へと変化する。



 『ギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!』



 金切り声を発し仰け反る怪物と、拘束から解かれた少女。



 肉が焦げる汚臭が包む空間に先程まで存在していなかった濃密な魔力が広がり、異形との間に何者かの気配が満ちていた。



 バチッ、バチッ・・・と、流れ弾ける紫電の波動。



 色は白黄、纏うは雷の衣。



 そこに見知らぬ少女が立っていた。



 その手に白銀の長銃を携え、銃剣バヨネッタの切っ先をかざす白麗の美少女が異形と相対していた。



 「人域に仇為すモノ『業魔カルマ』。その罪深き円環の理から解き放とう」



 ゆっくりと銃剣を眼前にかかげる。




 「私は魔砲少女。今から貴様を無塵の果てへと導く案内人。『魔砲少女 ツヴァイ』だ」




 少女は雷光の輝きを帯びる瞳で見据えた。