コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 伝えたい気持ちがあったとさ ( No.1 )
- 日時: 2014/12/02 20:36
- 名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
ープロローグー
「お兄ちゃんなんか大嫌いッ!」
目の前で妹が肩を震わせそう怒鳴った。
普段大人しい妹がそう感情的になるのは僕の記憶の中では初めてで、少し動揺する。
僕が何も言わないのを見て、「あっそ」と妹は素っ気なく、吐き捨てるように言った。
そして下を向いて唇を噛んだ後に、
「わたし、家出する」
家のドアを開け、外へ出て行ってしまった。
僕は速すぎる展開に追い付けず、ただただ呆然としているだけだった。
比較的仲の良い部類に入るであろう僕ら兄妹は、僕が中学一
年だったあの日、あの時まであんなに激しいケンカの経験がなかった。
経験がなかった故に、僕は一分程ボーッとしてしまい、妹も何も考えずに飛び出して行ったのだろう。
ボーッとしていた僕が我にかえり、「追いかけなきゃ」という結論が頭に浮かぶのに、そう時間は掛からなかった。
いや、顔色を変えた執事達がバタバタと外へ出ていったので我にかえり、戸締まりなど色々指示を出されてからその結論に至ったから、少し遅かったのかもしれない。
その頃は冬だったので、長袖のTシャツ一枚では少し肌寒かった。
部屋着の半袖Tシャツ姿の妹は、もっと寒い思いをしているだろう。
ただがむしゃらに走り続けた。
その時の僕は既に、これから起きることの気配を感じとっていたのかもしれない。
兎に角必死過ぎる位必死だった。
ーーあの子の家か?
ーー図書館にいるのか?
ーーじゃあ、あのスーパー?
妹の行きそうな場所は、全て回った。
妹は、いなかった。
どうしたらいいんだーー。
僕は、かじかみ赤くなった手を擦り合わせた。
真冬に手袋もせず、きちんと厚着をしないとなるとかなり寒い。
時折吹く、強い北風が僕の体温を奪っていく。
ーー仕方がない、帰るか
かじかんだ手をズボンのポケットに入れ、僕は急いで家を目指す。
妹の事は、一刻でも早く見つけなければ。
家に帰る途中の公園。
この公園を突っ切ればかなりの近道になる。
ただ、出てから直ぐの道が細く、しかも車通りが多いためあまり通った事はなかった。
たが今は、そんなこと関係無い。
公園に踏み込むと、一人でブランコに座る、見覚えのある影があった。
その影は僕を見ると、怯えた様な表情を見せた。
間違いない、妹だ。
僕が駆け寄ろうとすると、妹は出口の方へ走り始めた。
僕も追いかける。
そして、今も尚走り続ける妹が公園から抜けようとした時、事故が多すぎる為に付けられた公園の直ぐ外の、歩行者用信号機が赤く染まった。
ーー赤信号。
それが意味する事が、頭の中に雪崩れこんでくる。
あともう少し、もう少しで手が届く。
ただ、もう妹は横断歩道に飛び出していた。
迫り来る車を見たその一瞬の妹の顔が、頭から離れない。
「花ッ!!」
僕は妹が車に触る、その瞬間に妹の名を叫んだ。
だが、もう遅すぎた様だ。
後に残ったのは、なにやら赤い塊だけ。
妹はーー。
死んだんだ。