コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.15 )
- 日時: 2014/09/25 21:47
- 名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
「あの、状況がよく分からないのですが……」
僕は一番まともそうな水谷さんに話し掛けた。
(堀越さんは今も尚女の子と言い争っている)
水谷さんは「う〜ん……」と、言葉を濁らせる。
「なんかさ、みかちゃん……あ、あの女の子が宅君の部屋に入ろうとしてて……それを進が見つけて、ね」
そして、曖昧ながらも説明してくれる。
多分あの女の子は昨日僕の部屋に来た女の子とみて間違いないだろう。
あぁ、律儀に今日も来てくれたのか。
……嬉しすぎて涙が出るよ、全く。
きっと死にそうな顔をしているであろう僕は、水谷さんに「そうですか」と短く返した。
疲れはてていた僕には、いつもの愛想笑いなんて顔に貼り付ける余裕は無かった。
「部屋に入りたいので、どいてもらえます?」
そのまま、言い争う堀越さんと女の子に話し掛ける。
「なんか死にそうな顔してんな、宅。 平気かよ」
堀越さんが、僕の顔を見て言った。
ーー心配しているなら早く一人にしてくれよ、早く……!
僕は昔の癖で歯ぎしりしたくなるのを抑え「平気です」…………と、答えようとした。
しかし、言いかけた途端に周りの世界がグワンと揺らいだ。
「……っ、あ、あれ……?」
酷く目眩がして、僕はその場に座り込んだ。
「おい、平気か? おい、宅……た…………く」
僕に呼び掛ける堀越さんの声が、意識と共に遠退いていった。
*
目を開けると、見慣れた木目の天井が見えた。
体は毛布でくるまれていてる。
どうやら僕は、自分の部屋のベットの上に居るようだ。
ーーなんで、こんな所に……?
ボーッとしている頭で考える。
そして、なんだか妙に重い体を起こす。
「あぁ、宅君起きましたか」
「いきなり倒れるなんて、ちゃんと寝てんのかよ、おい〜」
「心配したんだよ〜」
ボーッとしていた頭は、僕の部屋で緑茶を飲み寛ぐオッサンコンビと、僕にのしかかる小さな女の子の姿を確認し、一気に冴える。
「宅ニイチャン、いきなり倒れちゃったんだよー。 それで、堀越のオッチャンがお姫様だっこをして運んでーー」
さらに、僕にのしかかる女の子の「いきなり倒れた」だの「お姫様だっこをして運んだ」だの信じたくもない言葉によって生まれた、精神的なダメージが僕に襲いかかってくる。
堀越さんが、湯呑みで緑茶をすすりながら平然と言った。
「まぁ、チビなのも理由に入るんだろうが、お前体重軽すぎんだろ。 もっと食べろ。
食べたらいきなり倒れるなんて事無くなると思うぞ」
堀越さんは、そして何故かタッパに入った赤飯を取り出す。
「ほら、雅子ちゃんも心配してたぞ。 これ、食えだとよ」
ポンと投げられる様に渡された、雅子ちゃんことアパートの大家さんのまだ暖かい赤飯の差し入れ。
手に広がるその温もりに、口元が少し緩んだ。
「……にしても殺風景な部屋だなー。 これでも高校生かよ」
「もう少し飾ってもいいと思いますよ〜」
……そうだ、差し入れに感動する前に勝手に人の部屋で好き勝手言っている、このオッサン達をどうにかしなくては。
「あの……出ていって貰えると有難いんですが……」
恐る恐る提案してみる。
「しかし、宅って病弱だったのか? 倒れるとか、軟弱だよな」
「そうですねぇ……病気持ちなんですかねぇ……」
「えっ、ニイチャン死んじゃうの?」
「死にはしませんよ、多分」
「いや、いつかのたれ死ぬかも分からん」
「えぇっ!」
……ダメだ、こいつら聞いてない。
いつの間にか女の子まで机で緑茶を飲んでいるし。
「僕は至って健康な高校生ですー。 倒れたのは学校で疲れはてたからですー。 出ていって下さいー」
僕はほぼ強制的に三人を追い出した。
そしてそのまま寝てしまいたいのを堪えて、大家の雅子さん特製の赤飯のタッパを開けた。
「いただきます……」