コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.18 )
- 日時: 2014/11/10 16:08
- 名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
- 参照: http://修正を致しました 11/9
「……おかえりなさいませ、お坊っちゃま」
目の前で羊の様な髭をした執事が、うやうやしくお辞儀をした。
僕は執事に「……ただいま」と、返した後にシャンデリアの付いた高い高い天井を、カーペットに寝転がりながら眺める。
執事はその様子を、目を細めて眺めている。
僕はその執事に訊いた。
「……母さんは?」
「お仕事がお忙しいようですね」
「……じゃあ、父さんーー」
「ご主人様もお仕事、お嬢様とお兄様は塾でございます」
ーー今日も一人、だ。
ーー
「花ーー。 なぁ、花ーー」
兄さんのすすり泣く声が、自分の部屋に籠っていても聞こえてくる。
僕は絢爛豪華なクッションを耳に当てた。
なにも、聞きたくない。
見たくない。
したくない。
それでも時は少しづつ流れていき、一人の有名企業の社長の娘が交通事故で死んだというニュースも、明日には世間から忘れ去られるのだろう。
そりゃあ、社長自身が死んだとするなら世間はこのニュースを大々的に伝えるだろう。
でもーー。
その子はただの『社長の娘』というだけで、世間の記憶に残るようなことはなにも成し遂げてなどいない。
それに……
「父さんや母さんは、僕らのことなんてーー」
自分で言った言葉が変に突き刺さり、苦しくなった胸を押さえて僕は座ったまま壁に寄りかかった。
不意に、今日兄に言われた言葉が頭をよぎる。
『ーーお前のせいだ、全部……っ』
「……僕のせい、だ」
*
「……おい宅、死にそうな顔してどうしたんだ」
雀がうるさく鳴き喚く、朝。
部屋から出てきた僕の顔を見て、堀越さんがギョッとしたような表情を見せた。
「堀越さんには関係ないことです」
僕は、無理矢理作った笑顔で堀越さんに言った。
まぁ、昨日見た悪夢のことなんて堀越さんには関係ないことだ。
堀越さんになんて話さなくて良いだろう。
そう、昔の夢のことなんて。
「じゃ、今から学校に行くんで」
僕は、堀越さんに手を振る。
堀越さんはきょとんとした顔をしていた。