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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.30 )
- 日時: 2014/11/03 13:46
- 名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
「皆、来ないね」
ペチャクチャと喋り続ける松尾さんに、僕は笑顔で話しかけた。
「えぇ。一体どこで道草くってるんだか……アンタと二人でいても楽しくないわ」
すると、松尾さんは急に悪態をつき、だんまりしてしまった。
喋りまくったと思えば、機嫌が悪くなったり……随分忙しい人だ。
しかし、シンと静まった部屋の中二人きりでいるというのは非常に気まずい。
いつもなら愛想笑いを相棒に話題を探していくのだが、頭が朦朧としていてそんな器用なことは出来そうになかった。
沈黙に耐えるしかないのか……
僕がため息をつきそうになった時、ドアの向こうから賑やかな足音と声が近付いてきた。
「しかし、美郷も大きくなったなぁ〜」
「なにジジ臭いこと言ってんの? まだアンタ30代でしょうが」
「そうですよ、進。 私なんてもうすぐ50です」
「えぇっ、水谷さんってもう少し若いと思ってましたよ、俺」
「ほほほ。 孝明さんは若作りに励んでいますものね〜」
「そ……そうなんですか……!」
その声は、一つ一つ聞き覚えのあるものだったのだが……どうしてあの人達が一緒に……?
「宅さん、入らせてもらいますよ」
僕が頭を捻ると、そんな声と共にゆっくりとドアが開いた。
そして、白髪のおばあさんが入ってくる。
山吹色の着物を優雅に着こなすアパートの管理人、雅子さんだ。
「まぁ、素敵なお嬢さんね。 こんにちは。
皆さんも入りなさいな」
雅子さんは、松尾さんにそっと笑いかけたあと、ドアの外に向かって語りかけた。
「素敵な人……」
と、松尾さんが呟いた。
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