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Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.33 )
日時: 2014/12/11 20:30
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

「ようじょって……私のことー?
 私は、美香っていうの」

女の子……いや、美香ちゃんは僕からピョンと離れると、床にペタッと座りこんだ。
飯沼さんが目を細め、美香ちゃんの頭を優しく撫でた。

「美香ちゃんか〜……私のこと、覚えてる?」

撫でられた美香ちゃんは、嬉しそうに首を縦に振った。

「美郷ネェチャンのことは忘れないよ!」

どうやら、笑い合うこの二人は昔馴染みらしい。
飯沼さんがアパートに来たときにでも、知り合いになったのだろうか。

美香ちゃんと目線を合わせ、嬉しそうに会話をする飯沼さんの表情は、最近こちらに向けてくる(まぁ、原因は僕が約束すっぽかしたことだけれども)気まずそうな表情とはかけ離れていて、とても新鮮で素敵だと……素直に思った。
あまりこういう風に人の顔を見たことはなかったので、尚のことだ。

「飯沼さんは子供が好きなの?」

気付くとそう、自然と問いかけていた。
飯沼さんは、驚いたようにこっちをジッと見つめてきた。
そして、小さくボソリと言った。

「……まぁ、ね」

それから「好きだけど」と、ハッキリ言い直した。
飯沼さんはその後すぐに目を逸らせたが、僕はそのまま飯沼さんのことをボーッと見つめていた。
まぁ、すぐに

「気持ち悪いからあっち向いてくれる?」

と、一喝されたが。

「……あ、そういえば」

その時松尾さんが、ポンと手を打った。

「美香ちゃんはさ、名字はなんていうの?」

そして頭をかしげる。
美香ちゃんは「えーっとね……」と、口を開く。

「ーー泉。 泉 美香っていうの」

「あ〜、泉と同じ名字じゃん!! 偶然だね〜」

松尾さんは大げさに手を広げ、美香ちゃんは「おお〜」と、小さく声を漏らした。

ホント……スゴイ偶然だ。
まぁ、名字が一緒なんてそんな驚くようなことでもないが。

外でカラスが、アホーアホーと鳴くのが聞こえた。