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Re: 伝えたい気持ちがあったとさ ( No.4 )
日時: 2014/09/08 01:06
名前: 花梨 ◆Vt/gXKM8AI (ID: Z.6cz.ec)

授業中。
真面目にノートをとる人もいれば、授業そっちのけで居眠りを開始する人もいるーー現に、僕の隣の席の人は眠りの世界へ飛び立った。

僕はノートをとる手を一旦止め、初夏の爽やかな風が吹き込む窓際の席で、窓の外を眺めた。
思わずボーッとしてしまう。

校庭ではどこかのクラスが体育をしている。
そのむこうの街では、沢山の人がうごめいている。
その一人一人に人生があり、大切な人がいてーー。

「泉君!!」

そんな僕の思考はいつの間に起きたのか、御園さんの押し殺した声に邪魔をされた。
僕が「どうしたの?」と訊ね様とすると、御園さんは黒板の前にいる教室をペンで示した。

「ーーもう一度言います。 ゆかりさんは、この時どう思いましたかーー。 泉答えろ」

黒板の前では、仏頂面をした教師が僕に話し掛けていた。
この教師は「兎に角コワイ」という事で有名だった。
一気に僕の頭は真っ白になって行く。

はぁ、ゆかりさん!?
国語の教科書を見つめ直しても、“ゆかりさん”のゆの字も書いていない。

教室中の視線が、僕に集まってくる。
あぁ、折角学校では「そこら辺にいる目立たないいいヤツ」を必死で演じて来たのに……!

その時、

「自分のプリンを食べられて激怒したんだよ」

と耳元で声がした。
見ると、御園さんが僕に答えを囁いてくれた様だ。

「自分のプリンを食べられて激怒しました」

御園さんに教わった通りの答えを言うと、一瞬の沈黙。

マズイ、地雷踏んだ……!

その一瞬の沈黙は、御園さんがデタラメを僕に吹き込んだんだと悟るのに、充分過ぎる時間だった。
現に御園さんは、僕が答えを言った途端に下を向いてしまった。

僕も教室も黙りこくったその後、誰かの

「………泉、サイコー」

という言葉でその沈黙が破られた。
皆せきをきった様に笑い始めた。

恥ずかしさで、顔から火が出そうだ。
それは御園さんも同じの様だ。
耳まで真っ赤にしてうつ向いている。

冗談のつもりで言ったのに、相手が本気にしてしまった。
……こんな所だろう。
あぁ、焦ってたとはいえ、なぜあんなにおかしい答えを本気にしたんだか……

なんだか可笑しくなってきて、笑い転げている皆を見て、僕の口角もキュッと上がった。

……因にその後、激怒した教師に僕は放課後の教室掃除を言い渡された。