コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 伝えたい気持ちがあったとさ ( No.5 )
- 日時: 2014/09/08 02:47
- 名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
窓から差し込む強い西日が僕の顔をジリジリと攻めてくる。
僕は手に持つ箒に寄りかかった。
僕はせっせと今、「放課後教室掃除の刑」をこなしていた。
でも流石に、一人で掃除する割りにはこの教室は広すぎる。
だが、頼れるような友人もいない。
一人で働くしかないのだ。
「何でこんなことに……」
そう口に出すと、一層気分が暗くなる。
僕は深いため息をつく。
ーーその時、教室のドアが開いた。
きっと、見回りの教師でも来たんだろう。
僕は振り向かずに掃除を続ける。
「あ、泉君……!」
しかし聞こえて来たのは教師の野太い声ではなく、暖かいふんわりとした声だった。
教室のドアの前に遠慮がちに立っていたのは、全ての元凶の御園さんだった。
「あぁ、御園さん……忘れ物でもしたの?」
僕がにこやかに話し掛けると、御園さんは首を横に振った。
「あ、えっと、掃除手伝おうと思って」
そして、そういつもより遠慮がちに笑った。
はぁ……この子も責任を感じているのか。
「じゃあーー。 手伝ってくれるかな」
御園さんは満面の笑みを浮かべ、頷いた。
ーー
「いや〜、助かったよ」
僕が箒を片付けながら言うと御園さんはまた笑顔になった。
この子には、負の感情が無いのだろうか?
……そう思ってしまう程に、掃除中だって彼女は笑顔を絶やさなかった。
「でも、悪かったね。 手伝って貰って」
僕は御園さんに微笑みかけた。
外を見ると、空はもうほとんど群青色に染まっている。
帰らないと、もうマズイ時間を僕の腕時計は指していた。
「あ……気にしないで! もともとデタラメを吹き込んだわたしが悪いんだよ?」
そんな御園さんは時計を見ると、冷や汗を垂らした。
「大丈夫?」
「あ、うん! わたしは、泉君の役に立てたならそれでいいよ」
思わず声を掛けると、御園さんは屈託の無い笑みを浮かべる。
僕は、「そっか」と頷いた。
「じゃ、またね!」
ーーきっと、手を振り返したこの頃から。
僕は、君が大好きだった。