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Re: 伝えたい気持ちがあったとさ ( No.6 )
日時: 2014/11/13 22:51
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

「……ただいま〜」

僕は自分の家……小さいモダン風造りのアパート、『陽だまり荘』のドアを開けた。
誰もいないのか、ヒンヤリとした空気が流れ込んでくる。
まぁ、誰もいない方が気が楽でいいが。

僕は玄関で靴を揃え、アパートの廊下を歩き自分の部屋を目指す。
その時、僕の歩く方向にあったドアが開いた。
そのドアによって、僕の視界が遮られーー。

「おうふっ」

僕は盛大にドアに鼻をぶつける。

「あ、スマンな宅」

ドアの向こうから、無精髭の生えたオヤジが顔を出した。
アパートの住民、堀越 進(38歳、未婚)だ。

「菓子があるぞ。食べるか?」

堀越さんはそう言ってニカッと笑う。
本人は善意で言ってくれているのだろうが、人と関わることを極力さけている僕にとってはそんな誘い、受けるつもりなど更々無かった。

「いいえ」と素っ気なく返し、僕は自分の部屋の中へ入った。

最低限のものしかない、寒々とした部屋。
ポツンと置かれたテーブルに写真が一つ、置いてある。
それを眺めながら僕は椅子に腰かける。


ーー僕と、妹の写真。

あの頃は、楽しかった。
毎日何も考えず遊び、笑い、話した。
そんな思い出も、今思い出せば憎悪に変わる。

いつから僕はこんなにひねくれた性格になってしまったのだろう。
本当に、いつからこんなに肩に力が入るようになったのだろう。
いつから世間体、というものに振り回され始めたのだろう。

僕は大きく息を吐き、瞼を閉じた。



「宅クーン!!」

どれくらいの時間が経っただろう。
僕は騒々しく僕の耳に響く声にうっすら目を開けた。