コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 伝えたい気持ちがあったとさ 【イラスト・有】 ( No.8 )
- 日時: 2014/11/13 22:59
- 名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
「あ、生きてた……」
僕の目の前で騒がしい声を張り上げていた主は、随分物騒な事を言ってはにかんだ。
そう、痩せている小さな女の子が。
確か、僕の部屋で寝転んでいるこの子は、向かいの部屋の住民だったはず。
「君、何で僕の部屋に?」
痩せた女の子はビシッと僕の部屋のドアを指差した。
その時に気づいたが、女の子はもう初夏で暑い日が続いているというのに、長袖長ズボン姿だった。
少し違和感を感じるが、そこら辺には触れないでおこう。
「宅クン、ドア開けっぱなしだったから」
女の子にそう言われて、ドアを閉めた記憶がないのに気づく。
何なんだ、僕。
不用心にも程がある。
いくら疲れたからといっても、帰ってきてなにもせずに寝てしまうとは。
空き巣にでも入られたらーー。
まぁ、捕られて困るものなどないが。
壁に掛け掛けた時計を見ると、午後9時を差しているのが分かった。
とりあえず、この何やらくつろいでいる女の子を帰さなければ。
「君、とりあえず自分の部屋に帰ろう。 お母さんが心配するよ」
面倒臭い気持ちを必死に抑え、くつろぐ女の子に語り掛ける。
女の子は僕が語り掛けた途端、悲しさと驚きなんかをギュッと詰め込んだ様な、複雑な表情を一瞬した。
ーーん?
僕が怪訝そうな表情をしたからか、女の子は「あ、うん……お母さん心配するもんね!」と仕切り直す様に又はにかんだ。
正座をした女の子の手が微かに震えていたのは気のせいだろうか。
女の子は無邪気にニッコリ笑った。
……その笑顔が、どこか懐かしい雰囲気をかもしだしていたのは、気のせいだろうか。
「お母さんは、わたしがいないとダメなの」
それから一拍おいて「みか!! どこにいるの!!」と、いうヒステリックな声が響いた。
その声を聞き、女の子は立ち上がった。
「……あ、呼ばれちゃった。 宅クン、又来ていいかな」
女の子はすがるような目で僕を見た。
正直何でよく知らない女の子にすがられるのか、よく分からなかった。
いつもなら、即刻首を振っている所だ。
が、女の子のその表情を見て僕は、身動きが出来なかった。
返事も出来ない。
「又来る」
女の子はそう言い残しドアを開けて出ていった。
その時に一瞬見えた、細すぎる様にも感じる、袖の下のその腕。
ーー生傷だらけ。
切り傷、火傷の後、痣。
いたる所に痛々しい傷が見えた。
虐待。
一瞬その言葉が頭をよぎる。
そうか、あの子はーー。
気分がズンと暗くなる。
全くの他人の事なのに、下手したら涙が出そうだった。
こんな最低な自分でも人に同情出来るのか、とどこか冷静な自分がいた。