コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 夏休みの日記 —ぼくとおかし星人— ( No.33 )
- 日時: 2014/09/19 08:15
- 名前: 夏村 ◆7ZbiYKpriI (ID: HU9qn.Bn)
親愛なる少年達へ
何から書くべきか、迷ってしまい、何度も書き直してしまいました。
ここに書いてある文字が、君達に伝わるかどうかわかりませんが
ただ、何も言わずに帰ってしまうのは、申し訳ない気がして
こうして、手紙を書くことにしました。
何もお礼ができなかったけれど、本当に感謝しています。
毎日会いに来てくれたことも、お菓子をくれたことも
言葉も文字も伝わらなかったけれど
生きる希望を見失っていた私にとって、君達の存在はとても大きかった。
私は、つい一ヶ月ほど前に、宇宙で事故に遭いました。
遭難し、ブラックホールに飲み込まれ、そして君達の住む星へとたどりつきました。
君達の星は、驚くほど私の星に、とてもよく似ています。
樹木も、海も、山も、植物、動物、食べるものから人々の生活にいたるまで、なにもかもです。
うっすらと、様子がおかしいと思い
座標を確認したところ、ここがまったく違う星だと知りました。
そして、私の住む星が、絶望的に遠い座標にあることも知りました。
この星から、故郷へ着くまでに、私が生きてるかどうか——。
知ったその晩は、ずっと泣きました。
もう、私は自分の星へは帰れないと思ったからです。
食糧もなく、気力を失い、私は生きる希望を失っていました。
もうこのまま死んでしまおう、とあきらめていました。
そんな時に、君がおいていったお菓子を見つけました。
最初は、興味本位で口にしただけでした。
ですが、食べるとじんわりと体が暖かくなるような気がしました。
それから、ここにお菓子を置いていった人は、どんな人だろう。
そう思い、私はそれが知りたくなりました。
今更ですが、おかしを勝手に食べてしまって申し訳ない。
ただ、それが君達との出会いと、私が生きる活力を戻すきっかけとなりました。
じつは君達を見たとき、正直、かなりショックでした。
見たことのない肌の色と、言葉、文字。
まさに、未知かつ脅威の存在でした。こわかったのです。
でも、君達から見れば、私が宇宙人です。
そんな私に、君達はよくしてくれました。
もし、警察にでも通報されたか、あるいは別の者に見つかっていたら、私は命が危ぶまれたかもしれません。
それからの日々は、本当に楽しかった。
私が悲しむ暇もないほど、毎日のように一緒に遊びましたね。
虫取りや魚釣り、かき氷を食べたり、工作を手伝ったりと。
(まさか、毎日お菓子を食べることになるとは思いませんでした)
まるで、子供に戻ったような気分でした。
このまま、ここで生活する術でも身に付けて
生きていこうかと、そう思っていました。
ですが、その矢先、君が持ってきたあのスーパーボールを見て、気が変わりました。
あのスーパーボールの模様は、まるで私の星そのもののようでした。
それを見たとき、懐かしさとさみしさに、泣いてしまいました。
やはり、私は、自分の星に帰りたい。
たとえ、死ぬ前に、たどりつくことができなかったとしても
わずかでいい。ふるさとに、少しでも近い場所にいたかったのです。
そして私は、自分の星へ帰ることに決めました。
座標を確認したとき、ここからだいぶ離れたところに
ブラックホールができそうな場所を、微弱ながら観測しました。
いちかばちか、私は、そこへ向かおうと思います。
もしかしたらもっと遠いところに飛ばされるか
あるいは、そのまま生きて出ることができないかもしれません。
無謀なことですが、それでも、私は自分の星へ帰れる可能性を賭けて、出立します。
今まで、本当にありがとう。
手紙を書きましたが、それだけでは味気ないので
今まで描いた絵も送ることにしました。
気に入ってもらえると、嬉しいです。
素敵な絵をありがとう。ずっと大事にします。
今日、君は何か悲しいことがあったようで
私に何かを必死に伝えようとしていましたが
しかし理解することもできず、大して力にもなれず
このまま去っていくのを、本当に申し訳なく思っています。
せめて体を冷やさないように、毛布はそのままはおってください。
どうか、お元気で。
さようなら。
追伸
もし、君達がこの文字を理解できるようになったら
あるいは
さらに文明が進み、宇宙へと出る機会がおとずれたら
いつか、私の星に遊びに来てください。
念のため、星の名前を記しておくべきだと思い、ここに書きます。
私の、ふるさとの星の名は「 地球 」といいます。
君達の友人より