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Re: その身体に、甘い牙痕をつけて。 ( No.10 )
日時: 2014/10/04 22:03
名前: 覇蘢 (ID: twODkMOV)



彼は、『話せない』。




『笑い合う』ことも
『歌う』ことも
一緒に『喋る』ことさえ。


彼はーー
『声』を失った。


■■■■■■■■■■


彼と出会ったのは小学生の頃。


内気で人見知りが激しかった私は、クラスでは浮いている存在だった。
席は一番窓際の後ろ……日陰となる部分だった。


「ねえ、あの子。一人で寂しくないのかな」


寂しい、よ。

コソコソと話している女の子たちの言葉に口に出さず、返答する。


……寂しいに決まってるじゃない。
皆と、話したいよ。
仲良くしたいよ。
お庭でバレーや鬼ごっこ、かけっこだってしてみたい。

……勇気がないだけだよ。


「そう思うんなら、話しかけてやれよ」


俯いていた私の前に影が重なる。


「え」


「寂しいか?」


「…………」

見上げれば、そこにはいつもクラスのムードメーカーの男の子だった。

いきなりの質問。
なんて答えたらいいか分からず、視線を逸らす。


「おい、俺が話してんだろ。こっち見ろよ!」


グイッと両頬を手で包まれ男の子の方へ向かされる。


「もう一度言う。……寂しいか?」


ジッと真剣な表情で私を見る。
その瞳に逆らえない。

何かが、弾ける音がした。


「ーーーーっ寂しいッッ!!!!!!」


思いっきり、吐き出した思いに涙が雨のように流れ落ちた。


「一人は嫌、だっっ遊びたいよ!仲良くしたいよ!皆とっっ」


手の甲で拭っても拭っても出てくる涙。


『お喋りしたい!!!!!!』


ーーーーここからは泣き過ぎて記憶が曖昧だ。
だけど、彼のお陰で私は今笑顔でいられる。
彼のおかけで、友達と『話せる』『笑い合える』『歌える』




けど、彼は。


















「…………外傷は軽いですが、声帯が麻痺してしまってーー」

















私のせいで『声を失った』ーー…。

               ゜.*・続く。゜゜.*