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Re: その身体に、甘い牙痕をつけて。 ( No.11 )
日時: 2014/10/06 22:24
名前: 覇蘢 (ID: twODkMOV)



『ーーーーねえ聞いた?あの事故』

花江はなえ雨宮あまみやかばってトラックにひかれたんだろ』

『え、じゃあ、花江はともかくなんで雨宮さんも休んでるの?』


■■■■■■■■■■

ピッピッピッピッーーーー

点滴の音が病室に鳴り響く。
ーー人の声はなくただ少女と青年がいるだけ。


帰り際に看護師の人から言われた言葉。
【外傷は軽いんだけど、声帯が麻痺してしまって声が出せないの。一生出せないというわけではないけど、この年頃の子には辛いわよね。】


……嘘だ。
看護師の人の表情がユラユラ揺れて、気分が悪かった。


「ーーーーっ」


何も言ってあげられない。
何も話せない。

涙だけが流れ落ちる。


「……っ私が!!事故ればよかったのに…」


そんな事を口走ると、花江は怒った表情で涙を拭っていた私の手を握り、紙に何か書き始めた。


《おれのことは気にしなくていいから、おまえのせいじゃない》


「な、く………っな、」


辛そうに『声』を絞りだす花江を見て、ますます罪悪感が増す。


「泣くよ!!だってっっ私のせいで!気にするなっていっても気にするに決まってるでしょ!」


私の大声を聞いて、目を点にしてこちらを見る花江。


「あ……あの、えっと。」


慌てる私を見て、花江は笑った。


《初めて、おまえが俺に対して大声あげたのみた。》
《新しいはっけん》
《うれしい》


何 それ。
意味わかんないよ。
なんで、笑えるの?
なんで、怒らないの?

「私、帰る」

それしか、言えなくて。
顔、見れなくて。


ーー私は、病室を離れた。




花江は、私に対してよく笑う。
小学校を卒業してから、びっくりするほどの早さで背は抜かれ別人のようになっていった花江はなんだか男っぽくて……女子から騒がれて遠くに行ってしまうじゃないかと私は焦っていた。

『好き』なんて、気づくんじゃなかった。


あの時、一緒に帰ろうなんて言わなければ。
私が、花江を欲しがったから。
そばにいて欲しかった。
それだけ。


その欲に神様は私に、罰を与えた。


「ごめんな、さ…っっ」


口から出るのは謝罪の言葉
溢れる涙

何度も、何度も繰り返す。


「神様、お願い。もう、何も欲しがらないから………花江の声を返してくださいっっ…………!?!?!?」


いきなり、後ろから腕が回されぎゅっと肩を抱かれた。


「花江?」


抱きしめている花江の腕は微かに震えていた。



「ち…………がっっ、ちっが、う」


「何……っ?花江?違う?」


「ーーーーっん、ん、い、いっっ……っくな」


「……花江?」


伝わらないのがもどかしいのか、花江は唇を強く噛む。


「………き…だっーーーーきっ…すす…っ…っーーーーき…っーーーーっだ…っ…す…っ」



「え………好、き?」


すると、私の手の平に何か書き始めた。


《すきだからまもったなくな》
《おまえのせいじゃない》


好き。
キミが好き

その気持ちが届いたとき、
君は何を願うだろうーー……

             ・:*+.End・:*+.




■その気持ちが君に届いたとき。

ーーーーーーーーーー

終わりがなんだか、スッとしませんよね。
なので、花江と雨宮のAfter Storyを少し考えています。次回。