コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: SANDAI ( No.32 )
日時: 2014/10/08 17:06
名前: いろはうた (ID: 5obRN13V)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

死なないで墓書。
まだ結が残っているわ☆

でも、やりやすいように書いておきますね〜


次のお題は、

「騎士」「姫」「ヨーロッパ」



くくくく……
墓書よ……
あえて君が苦手そうなのにしてみましたよ……
この乙女要素盛りだくさんの三題にどう対応するのかな……
くくくく……




〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜







*桜子は、いつものようにうまく笑顔を浮かべられず、強張った笑みでふうがを見た。

今日はただ会いに来たのではない。

もう会えないと言いに来たのだ。

桜子の家は少し裕福な商人の家だ。

その桜子に子爵の子息からの縁談が舞い込んだ。

子爵から商人の娘への縁談など、本来ならまずありえないほどの素晴らしいもので

両親も姉もとても喜んでいた。

縁談はよほどのことがない限り断れない。

妻は夫以外の他の男とみだりに会うことなんて許されないから、別れを告げに来た。

ふうがの顔を見上げる。

彼の名の漢字も知らぬ仲。

でも、そのかすかな絆にすがりつきたいと思うのはいけないことなのだろうか。

目が合って、ふうがは整った顔に優しい笑みを浮かべた。

この笑顔がこの日ほど恨めしく思えたことはない。


「……ずいぶん嬉しそうね。

 なにか良いことでもあったのかしら」

「ああ。

 縁談がやっと決まったからな」


笑顔が凍りついたのが自分でもわかった。

縁談?

ふうが、が?

桜子の様子には気付かず、ふうがはいつになく上機嫌で饒舌だ。


「やっとだ。

 随分と手続きに手間取っていたからな。

 正直、見合いも必要ないだろう。

 すぐに祝言をあげる」


桜子はふらつく体をなんとか支えた。

わかっていたはずだ。

ふうがだって年頃だ。

仕立てのいい服を着ていることからも、上流階級の家柄の息子なのだろうと随分前からわかっていた。

彼は良家の子女と婚儀を挙げ、桜子は顔も知らぬ別の男と結ばれる。

いつかはこの日がくるってわかっていたはずだ。

祝福の言葉を。

おめでとうって言わなければ。

幸せになってね、と。

指が震える。

むりやり唇をこじあけようとしたら、お祝いの言葉の代わりに、目から雫がこぼれ落ちた。

あわてて顔をそらしたが、見られてしまった。

ふうがは驚いたようだった。

手を伸ばそうか伸ばさまいか悩んでいるように彼の右手が空中をさまよっている。

顔が歪むのが分かった。

不器用な、とても優しい人。

好きになってはいけないと何度も自分に言い聞かせたはずなのに……!!

思いをなんとか飲み込むと、桜子はなんとか口を開いた。


「さよ、なら」


絞り出すように言って、一目散に家に駆け戻る。

ふうがは追いかけてはくれなかった。

そういえば、自分の縁談のことは言わなかったなと、今更気づいた。

雪など降っていないのに、滴が頬を伝った。