コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: SANDAI ( No.35 )
日時: 2014/10/17 22:54
名前: 墓書 (ID: w.lvB214)

入りきらず、二つに分けました。
ようやく完結。
時代と自らの捻くれた性根にやられました。
これはほんとごめんなさい、見逃して欲しいです。

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落ちた雫は雪を解く。

足下の感覚が消え、落ちて行く。

このまま底まで落ちてしまって、この心を埋めてしまえたら、楽になれるのだろうか。 

気付けば、家に着いていた。

誰とも顔を合わせないように足早に部屋へと向かう。

最後に見たふうがの顔が頭から離れない。

もう嫌だ、何も考えたくないと、必死に頭の外へと追いやる。

そうしているうちに、何時の間にか眠ってしまっていた。


結局、自分は通例に従い、見合い相手と結婚した。

幸福なことに、彼は優しく良い夫であった。

また、自分は覚えていないのだが、幼い頃に一度、会ったことがあるらしい。

とは言っても、遠くから眺めていただけだったと彼は笑った。

数年後に私を見つけ、見合いを申し込んだという。

幼い頃から恋い慕ってくれていたと聞いた時はとても驚いた。

そうして、共に月日を過ごすうちに、自分も少しずつ彼に恋慕の情を抱くようになっていった。

しかし、どうしても嫌なことがある。

それは、彼に時折ふうがの面影を見出してしまうことだった。

既に彼への思いは途切れており、二度と会うことはないと意図的に考えないようにして来た。

けれど、笑った無邪気な表情が酷く彼に似ているように思えて堪らなくなってしまうことがあるのだ。

それをいい加減どうにかしてしまいたいと考え出した、冬のはじまり頃であった。

冬物の準備をしていると、古い箱を見つけたのだ。

埃を被ったそれに何故か自分は手を伸ばしてしまっていた。

いけないと思いながらも勝手に中身を取り出してしまう。

出てきたものは小さなハンチング帽子と巾着袋、その他子ども用のあれやこれやがいくつか入っていた。

帽子の内側を覗き込み、思わず巾着袋を落としてしまう。

硬い音が響き、中からコロコロと何かが転がり出てくる。



それは全て青のビー玉だった。

「あいつはね、いつも青ばかり欲しがったんだ」

突然かけられた声に、はっと我に返る。

何時の間にか彼が側にいた。

「あ…」

咄嗟に勝手に中身を見てしまったことを謝ろうとすると、彼は緩く首を振った。

「いや、いつかは見てもらおうと思ってたんだ。」

桜子の好きな優しい瞳をこちらへと向け、彼は微笑む。

「わかったんだろう?」

彼の言うとおり、自分はわかってしまった。

小さく頷く。

やはり、このハンチング帽子はふうがのものだった。

先程見たとき、裏側に幼い字でふうが、と書かれていた。

それから、彼から聞かされた話は驚くものだった。