コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: SANDAI ( No.42 )
日時: 2014/10/28 20:01
名前: 墓書 (ID: Uj9lR0Ik)

あだるてぃ…とは。

一度あらぬ方向へと思考が傾きましたが、持ち直したよ!

墓書、本を読む際あだるてぃになると真顔になります。

ほのぼのが良いですよ、猫と戯れるのが一番です。

あ、そうじゃないか。

まぁ、うん、いいや。投げよ。


承、




*玄関のドアが開き、大きな音を立てて閉まる。

そこで漸く怠い身体を起こした。

「なんでよりによって今日なんだよ…」

口を拭うと白シャツが汚れ、思わず舌打ちをする。

別に自分が洗うわけでもないし、潔癖性でもないのだけれどひどく苛立つ。

上から釦を外すと肌にピリッと痛みが走った。

「…さいあく」

じっと自分の身体をみていると、足音が響き此方に向かうのが聞こえた。

音の響き具合からやはりキコだろうとわかる。

早く服を着ようと手を伸ばすと間違って兄貴の服を手に持っていることに気付き部屋の端に放り投げた。

もう面倒だ。

そこまで付き合いも長くないし、女性の前で半裸を見せるのはどうかとは思うが、もうどうでもいい。

ぽすりとソファに身を沈める。

すると、暫くしてドアが開いた。

「はいるよ〜…って、え…何脱いでるの?」

ドアを開けながら声を掛けても意味がないと思う。

キコの問いかけを無視し目を閉じると、キコが近づくのがわかった。

「怪我してるじゃない。」

それでも返答せずにいると腕を掴まれた。

「いっ!…何すんの。」

「見せなさい。ていうか、手当するから。」

そういうと一度手を離してドアから出て行く。

少しすると何処から見つけたのか救急箱を持ってやってきた。

「ほら、観念しなさい。」

そこまで嫌がった覚えは無いんだけど。

仕方なくソファに腰を下ろすとキコはすぐ側で膝立ちになり手当を始めた。

真剣に傷の手当をするのを上から眺めるとつい長い睫毛に目がいってしまう。

果たして、これは本物のキコ自身の物なのだろうか。

女なんてメイクでどうにでも変えてしまう生き物とはわかっているのに、それでも綺麗だと思ってしまう。

そんな自分が、どうしようもなく馬鹿だと思った。

数分程度、無言の時間が流れた。

粗方のことは終えたのだろう。

ふとキコが口を開いた。

「学校で喧嘩でもした?」

黙っていることを肯定と捉えたのだろうか。

「へぇ、案外やんちゃしてるんだ?」

キコが面白そうにクスクスと笑う。

バカなことを言う。

なんでそんな面倒なことをしなければならないと言うのだろう。

「アンタのせいだ。」

「え?」

言うつもりなんて無かったのに口が滑った。

表情は変えないまでも、内心は苦い顔をする。

「別に…なんでもない。」

キコの手を払いのけるが、逆効果だったらしい。

怖い顔をして此方を見ている。

「私のせい…って、どういうこと?」

「…あんたの彼氏さんがね、なに人の女に手、出してんだよ、だってさ。」

彼氏も何も俺の兄貴だ。

それでも、そんな風に嫌味を言ってしまったのは、キコが俺の気を奪ってしまうのがいけないのだ、と責任転嫁したかったから。

アンタが悪い。

アンタが俺をこんな風にするから。

自分のことで精一杯だった。

言い訳にもならないかもしれないが、そのせいで、その時キコがどんな顔をしていたかなんて全く気がつかなかった。

「別にそんなつもりないのにさ、言い掛かりつけられてさ。本当ウザくて。黙ってたら、挙句にはお前がキコのことを好きでもキコは俺に惚れてるし、お前なんてなんも思ってねぇよ…って、なぁに勝手に人のことわかったように。んなつもり、ねぇんだよ。アンタが勝手に来てるだけじゃんか。キレて殴ったら返り討ち。このザマ。ほんと、笑える。」

堪え切れず笑い出してしまう。

本当は自分のせいだ。

兄貴にあんなことを言われて、咄嗟に否定できなかったのは自分に邪な気持ちがあるからに違いなかった。

手を出したのは図星をつかれたからだ。

そんな自分があまりにも滑稽で笑いを止められなかった。