コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: SANDAI ( No.54 )
- 日時: 2014/11/20 16:04
- 名前: 墓書 (ID: Mj3lSPuT)
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承
連れて来られたのは、どうやら貴賓用の部屋らしかった。
豪華に飾り立てられた装飾はどれも美しく映えているが、それでいてさり気なく施されている。
全体的に赤で統一された部屋にラハナはやはりここが自分の国でないことを確信する。
ラハナの国では基本的に白、クリーム色のような色を基調とした服装や装飾が好まれる。
調度品は主に木材や金属では無く、ラハナの国やその近辺で産出されるガルタボと呼ばれる層の土から作られる焼き物が頻繁に使用される。
通常の焼き物とは違い丈夫で軽く、焼いた後に加工が可能であり、特殊な光を放射することによってはじめて、形成が完了する。
その完成された色が暖かなクリーム色であるのだ。
それと比べ、こちらの国では調度品は木材らしいが大半が布で覆あいがかけられており、殆ど全てが丁寧に金の刺繍の施された赤の織物である。
これは、レイダルトと呼ばれる木の皮から染色液を抽出し、蜘蛛と蛾の幼虫が吐く糸を紡ぎ合わせて作られた糸で織られたものである。
真っ赤とまではいかないまでも、少し黄みがかった赤色が鮮やかに染め上げられている。
「…大丈夫…かな…。」
指で細やかな金の筋を辿りながら呟く。
いくら約束をしていてもただの口約束で、必ず守られるとは限らない。
しかし、あの時はそうするしかすべはなかったのだ。
「破ったら、呪ってやる…」
できれば、末代まで…などと、ラハナは冗談でも何でもなく本気でそのようなことを呟いた。
「何を物騒なことを言っている。」
「…!!」
何時の間に入ってきたのだろうか、知らぬ間にイェリが部屋に居た。
日々の鍛錬の賜物なのか、ちっとも気づきはしなかった。
少し驚いた顔をしたラハナだったが、何も言うことはないと顔を背けた。
「…流石、王女だな。プライドの高さは一端でおられる。」
態とらしく大きなため息をつき、イェリはラハナへと近づく。
本当はすぐにでも去ってくれないかと願ったのだが、やはり無視をしても意味はないのだろう。
「…貴方は本当に失礼ですね。」
ラハナはそうとだけ告げるとイェリを睨めつけた。
あんな目で見下されるのも癪で椅子から立ち上がる。
(……大きい…!)
そこでようやく、立ち上がっても顔一つ半ほどの身長差があるのに気付く。
連れて来られた時に地面に全く足が着かなかったのは、そのためだったのだろう。
無駄な足掻きだとわかっていながらも、思わず足場を探してしまった。
ベッドにでも乗れば越えれるかしら、と周りをキョロキョロと見ていると、近づいたイェリに腕を掴まれビクリと体が震えた。
「そんなに怯えるな。別にとって食いはしない。」
見上げると、呆れたように此方を見ているイェリと目が合い、ラハナはかっと頬に熱を覚えた。
自意識過剰だと、馬鹿にされたのだ。
そう感じ、憤りをなんとか抑えてラハナはイェリに問い掛けた。
「では、何のためにこんなことをするのかしら?他国の王族や大臣など、皆殺しにすることさえ少なくないというのに。」
別に、妾なるのだとばかり考えていたわけではない。
だが、下働きやいろいろと申し付けるにあたり、普段からそういうことを行っていなかった自分を使うのも面倒ではないか。
ここに来てから考えていた自分の未来を見通せず、疑問に思っていたことを口にした。
そうすると、しばし考えた後にイェリは口を開いた。
「ただの人質だ。それ以上も以下もない。お前はこの部屋で一生を過ごせば良い。」
どうでも良くなったのか、イェリはラハナから手を離し、背を向けた。
「…それに、皆殺しなど面倒なことはしない。何処で復讐を企てるものがいるかわからないからな。大切なものを人質に取られることの方が人間は動きにくいものだ。お前のやることは精々、元気でやっているという手紙を書くぐらいだな。」
何か欲しいものがあれば外の者に言え、と言ってイェリはそのままドアの向こうへ足を向けた。
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