コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: SANDAI ( No.62 )
日時: 2015/02/17 13:15
名前: いろはうた (ID: 16oPA8.M)
参照: http://pixiv.me/asaginoyumemishi

珍しく墓書の方からのリクエストがあったので
そのように書かせていただきたいと思います。
いろはうたがわりとすきなジャンルに入るので……うふふふふふ……



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜





*「おはよ、柚子」

「おほよう、桐人」


ふわあ、と欠伸をかみ殺しながらキッチンにいる弟の桐人に挨拶を返す。

弟といっても血はつながっていない。

十年前に父が再婚した継母の息子に当たる。

でも、十年以上も一緒に暮らしているともう弟としか思えなくなっていた。

血はつながっていなくても姉弟にはなれるのだ。

テーブルの上には既に朝ご飯が乗っていた。

焼鮭に味噌汁、卵焼き、と今日は和風な朝ご飯だ。

全部、桐人が作ったものだ。

その隣にはお弁当までできている。

仕事で忙しい両親の代わりにいつも桐人が作ってくれるのだ。

普通に柚子が作るよりも上手で、とてもおいしいので、料理はいつも桐人に任せていた。

でも今日は少し違う。


「お父さんとお母さん、今頃空を飛んでるのかなぁ」


もぐもぐと卵焼きを頬張りながらつぶやく。

今日、両親はそろってイタリア旅行に行っている。

結婚十周年記念に、とわざわざ仕事を休んで、昨日出発した。

少なくとも一週間は帰ってこないだろう。

今頃、地中海の上を飛行機で飛んでいるのかもしれない。


「……いただきます」


地中海に想いを巡らせていると、桐人がようやく席について手を合わせた。

彼は昔から無口だ。

さらに感情も表情に出にくい。

だから何考えているのかわからないことも結構あった。


「お土産はなにがいいかなぁ」

「……パスタソース」


無表情でそう返した桐人に、柚子は頬を膨らませた。


「もう!!

 桐人はすぐに料理のことに走るよね……」

「……それは」

「私はヴェネツィアガラスのペンダントとか欲しいなぁ」


少し前にテレビで見たものがとても綺麗だった。

女子ならやっぱり綺麗なものには心がときめいてしまう。

くるかどうかもわからないガラスに思わず頬が緩む。


「……早く食べろよ」

「食べてるよ〜」

「……遅刻するぞ」

「むぐっ!?」


卵焼きが喉に詰まりそうになった。

時計を見たら、確かに思ったよりも時間が経っている。

家を出る時間まであと十分ほどだ。


「や、やば!!

 私、制服にも着替えてないのに!!」


味噌汁をあわてて口の中に流し込み、急いで椅子から立ち上がる。

背後で桐人が何か言ったような気もするが、慌てすぎて気にも留めていられなかった。

たぶんまたバス停まで走ることになる。

柚子と同じ高校に通う二年生の桐人も、きっとなんだかんだ柚子を待ってくれるのだ。

これがいつもの日常。

今日もいつも通りの一日が始まる。










……はずだった。