コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: SANDAI ( No.64 )
日時: 2015/02/20 00:49
名前: いろはうた (ID: 16oPA8.M)
参照: http://pixiv.me/asaginoyumemishi

あー……うん……
これ、大事なところいろはうたに書かせる気満々ですよね……
まあこういうの大好きだから全く問題はないけれども……


男同士の友情などやりだしたら、いろはうたは欲求不満のあまり
発狂して男キャラを女体化してしまう可能性、大です。大。(真顔


そして、いろはうたの野郎どもがいつもヒロインの取り合いをしているのは、
いろはうたが単純に、ヒロインが取り合いされる系が大好きだからです☆



んー……
ちょっと微妙なところでぶちぎりますが、
そこは墓書の輝ける文章力が何とかしてくれると信じています。



次のお題は

「海」「馬」「タンザナイト」



〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜






*ベッドにつきとばされて、悲鳴すら上げられなかった。

桐人が後ろ手でガチャリとドアのカギをかけた。

何が起こっているのだろうか。

状況がよく呑み込めないまま、必死に頭だけを働かせる。

そう。

武道場の裏まで行った。

そこには隣のクラスの男子が、どこか照れくさそうに柚子のことを待っていた。

そこまではよかった。

しかし、柚子を追ってきていたらしい桐人追いつかれ、

思いっきり手を引かれて、相手の男子と言葉を交わす間もないまま、引きずられるようにして

何故か教室ではなく、彼は家に向かって帰りだしたのだ。

あわてて止めようとしたが、桐人は見たことがないほど怒っている顔で、何も言えなかった。

そうして、あれよあれよというまに家まで引きずられてしまい、今に至るというわけだ。


「桐人……?」


自分の声がびっくりするほどかすれていた。

部屋は暗い。

彼の顔はよく見えない。

原因はよくわからないが、桐人は怒っているようだった。

この何年間で初めてなくらい。


「……あれは、なに?

 告白?

 呼び出されたの?」


嘲りが混じった口調に、頬が熱くなった。

まるで、馬鹿にされているみたいで。


「き、桐人には、関係ないでしょ!!」

「関係ない……?

 どこが?」


手をついて体を起こそうとしたら、桐人が素早く距離を詰めてきて、柚子の上にのしかかってきた。

圧倒的な力の差に、なすすべもなく背からベッドに倒れる。

身をよじっても、肩を押さえつける手が外れることはなかった。


「柚子はさ、昔から姉貴ぶろうとしてたよな

 歳なんか、一つしか変わらないくせして」

「桐人!!

 やめて!!

 離して!!」


桐人がスッと目を細めた。

その瞳は冷え切っていた。

それだけで、ひどく酷薄な印象を受ける。

こんなに饒舌な、感情を表に出している桐人は見たことがない。

愕然とする。

手が外れない。

それどころかますます強く指が食い込んでくる。

怖い。

初めてそう思った。


「でも、おれは、一度だって柚子のことを、姉、だなんて思ったことない」


言葉がつきささる。

顔が歪むのが分かった。

これまで築き上げてきたモノをすべて否定された気がした。


「柚子は全然気づかないもんな、鈍感だから」


何に……?

混乱した頭ではうまく思考が求まらない。

口の中が緊張と恐怖でカラカラに乾いている。

心臓が痛いほど早く脈打つ。

やめてって言わなきゃ。

はやく元の、いつもの空気に戻さないと。

こんな桐人は知らない。

いつもの無口で無表情で優しい桐人に戻さないと。

だけど、言葉が出ない。


「料理はおれが担当して、胃袋つかんでおいて、家事もほとんどおれがやって、

 おれなしじゃ生きていけない位にして、

どんどん外堀埋めてるのにも、柚子は全然気づかないもんな」


桐人は唇の端を歪めるようにして嗤った。

桐人の、柚子には見せてこなかった部分が露わになっている。

いろんな感情がごちゃまぜになって、言葉をうまく紡ぎだせない。


「変な男がよってこないように、

 柚子にはおれしか必要がなくなるように

 ずっとずっと見張ってたのに……」


うわごとのような言葉。

ぐっと桐人の手に力がこもった。

痛みに顔がまた歪む。

桐人の顔が髪に隠れて良く見えない。

表情は見えないはずなのに、なぜか彼が泣いているように思えた。

そんなはずはないのに。


「ずっと、我慢してたんだ……。

 こんなに近くにいるのに必要以上に触れない。

 一緒にもいられない。

 傍にいるだけで、顔が緩みそうになるから必死で無表情装って……。

 笑いかけられるだけで、もう、色んなものがぶっとびそうになって……

 ……けど、もう……いいよな?」


柚子は緩慢な仕草で瞬きを繰り返した。

桐人の顔がぼやけて見えるのは、涙のせいなのだろうか。

それとも。


「……ちょうどいい。

 父さんも母さんも、一週間は帰ってこない」


桐人。

名前を呼びたいのに。

声にならない。

桐人は、ずっと、ずっと、苦しんでたんだ。

私は、誰よりも近くにいたのにそれに気付けなかった。

ギリリと、桐人が奥歯を噛みしめた。


「……他の男に奪われるくらいなら」