コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.10 )
- 日時: 2014/09/21 10:21
- 名前: 雪兎 (ID: hqWYiecP)
「ジーク・・・あんたこんなトコで何してんの!ってか、離しなさいよ!」
するとジークはパッと手を離し、いつものニヤニヤ笑いを浮かべながら言った。
「おっ、悪い悪い。あんまりにもお前のリアクションが面白いもんだからさぁ、ついからかってみたくなっちまって。・・・それにしてもお前、あわてすぎだっつの。・・・ぷっ、あは、あはははは!!」
「こらあああ!笑いすぎっ。しかも久しぶりに会ったと思ったら何なのよ!」
こいつの名前はジーク・オースティン。私と同じ15歳。
燃えるような赤い髪に、黒いヘッドバンド。そこから覗く茶色の瞳。
整ってはいるが、どこか幼さを残す顔立ち。
そして、胸元には親指ほどの、鎌の形をしたペンダント。
幼馴染で昔はよく遊んでいたのに、母親が大富豪と再婚したのをきっかけに引っ越してしまい、セント・ブラックウェル学園に通い始めたのだと聞いた。
ちなみに、私のことをフィルと呼ぶのもこいつだけだ。
そんな奴が、今さらどうして・・・?
するとジークが口を開いた。
「おい、そろそろ本題だ。今すぐ学園へ向かうぞ、フィル。遅刻する」
だから!
「それがわからないって言ってんの!何よ、みんないきなり。わけわかんなすぎ・・・。」
頭を抱えていると、下からジークが顔を覗き込んできた。
「ひゃっ!?」
「あのさあ、フィル。確かに今は訳わかんないかもしれないが、それが今のお前に一番いい道だと思ったから、親父さんも何も言わずにお前を送り出したんじゃねえの?」
「そ、それは・・・。」
するとジークは、今までの真面目そうな顔つきからふっといたずらっぽい顔つきに変え、言った。
「それともまた俺がお姫様抱っこして連れてってやろうか?・・・昔みたいに。」
「うっ・・・!!」
顔が、バアッと熱くなっていく。
「わ、分かったわよっ。行けばいいんでしょ、行けば。・・・あれ、でもちょっと待って?」
もう一度、手紙を見返してみる。
「ここには、『一ヵ月後から、この学園に通うこと。』って書かれてるけど・・・。」
だから、とジークは真顔で返す。
「その手紙、ホントは一ヶ月前に届いたモンなんだよ。だから、入学式は今日。」
きょう?キョウ、kyou、
「今日!?」
ぷくく、と笑いをこらえながらジーク。
「だから言ってんジャン、遅刻するって」
「わああああああ!!荷物、荷物・・・!!まとめてあるって言ってたよね、どこどこどこ・・・って無いいいいい!ひゃっ!」
いきなり後ろから肩を抱かれ、びくっとして振り返ろうとすると、そこにはジークの顔が。
「あわてんなって。ここにあるよ、ココ。」
あ、あんたはっ。
「もうっ、だからスキンシップとりすぎ!離れて!・・・でもまあ、一応ありがと」
ピンク色のトランクを、複雑な思いで受け取る。
遠くを見つめていたジークが、ふいに言った。
「あ、そろそろ来たようだぜ?」
「え?」
同じように目を凝らすと、黒塗りの大きなリムジンが近づいてきた。
近所の人たちが、何事かとざわつき始める。
音も無く目の前に止まったリムジンを指差し、ジークに問う。
「ねえ、もしかして、コレで行くの?」
「そうだけど。」
「・・・あんたって、本当にお金持ちだったのね。」
するとジークが、ははっと笑って答えた。
「何だよ、それ。・・・さ、早く乗れ。出発するぞ」
私がリムジンに乗り込んでいる間、ジークが厳しげな目で薄暗い路地を睨んでいたことを、このときはまだ知らなかった。
第二話へ続く・・・