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- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.111 )
- 日時: 2014/11/29 23:14
- 名前: 雪兎 (ID: gDKdLmL6)
第二十九話 <対抗戦編>
「……ここまで、でしょうか」
カイルは、黒服たちと対峙しながら呟いた。
はあはあと荒い息を繰り返しながら何とか立っていたロゼッタが、申し訳なさそうに返す。「すみ…ません、私、のせい…で」
さっきからここを突破しようとしている二人だったが、黒服たちに阻まれて通れない。
私の魔力が、もっと高ければ。
ロゼッタの胸のうちに、悔しさがこみ上げる。
カイルはいつものように微笑んだ。
「いいですよ、別に。それより、あまり喋らない方がいいです。こうしている間にも、あなたは二対の精霊を使役しているのですから」
黒服の一人のリーダー格らしき男が、苛立った声で言った。「君達さあ、いい加減諦めてよ。こっちも疲れるんだよ…ほらみんな、さっさと黙らせて」
「了解」
指示を受けた部下二人が、前に歩み出て、杖を構える。
「降参するなら今のうちだぜ?行け!」
杖の先端から黒い影が飛び出し、二人を捕らえようとうごめく。闇魔法のようだ。
カイルはすぐさま指揮棒を一閃して、小規模な津波を起こし、魔法もろとも黒服たちを押し流す。
リリアンに借りた指揮棒のおかげで、以前よりも魔力が強まったようだ。だが、魔力切れが近い。
まずい……!
そのとき。
バチバチバチッ!!
「うわああああ!!!」
電流が流れる音とともに、黒服たちが悲鳴を上げて動かなくなった。
何!?
「大丈夫、ちょっと感電させただけだから」
そこには、風魔・雷魔と、学園の生徒二人が立っていた。
「あ…良かった…!」
うつむいていたロゼッタが、うれしそうに微笑む。
「なんか、変な人たちに捕まってたからここまで連れてきたんだけど」
雷魔が二人を振り返りながら言った。一人は金髪の少年、もう一人は長いロールの女の子だった。
「やあ、もう大丈夫だよ君達!」
「…あの二人、今度絶対におしおきですわ」
言っていることが全然かみ合っていないが、とりあえず仲間がいて安心だ。
すると、緊張の糸が解けたように、隣にいたロゼッタが気を失った。
☆
校舎の一室に非難していたフリト・ノイモーントは、窓の外を眺めていた。
周りの生徒達は避難訓練の時のように、座り込んでキャッキャとはしゃいでいる。
金持ちの連中というのも、案外子供っぽいものなのか。
そんなことを考えていたフリトの視界に、信じられないものが飛び込んできた。
「そんな…アークッ!?」
間違いない。あの黒ずくめの姿……どうしてアイツが!
いきなり立ち上がったフリトを、生徒達が不思議そうに見上げている。同級生が、「おいどうしたよ?」とのんきに声を掛けてきたが、答えている余裕などない。
確か……いた、あいつだ!
部屋を見回したフリトは、目立つ長身の少年を視界に捉えた。
彼の名はギルバート・カールソンとか言ったはず。二年にして特別調査隊隊長をまかされているエリートだ。俺より一つ下か。
この場を取り仕切っているのは彼だから…うまくここから出る許可をもらおう。
「なあ、お前!」
声を掛けると、ギルバートが振り向いた。「どうしましたか?」
「えっと、諸事情によりここから出たいんだが…いいかな?」
するとギルバートは少しいぶかしげに聞き返してきた。「なぜですか?理由によっては、校舎内なら許可できますが」
はあ、やっぱりだめか。
「そこを何とか頼む!校舎外なんだ、どうしても行きたいんだ!…敷地の外には出ないから。な?」
必死の説得だった。するとしぶしぶといった感じでギルバートがため息混じりに言う。
「そこまで言うなら。ですが、わたしも同伴させていただきます」
えっ、こいつも!?
…まあ仕方がない。むしろ運がいいほうだと自分をほめてやろう。
待ってろよ。…お前は必ず、俺が。
次回、第三十話。お楽しみに☆