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- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.119 )
- 日時: 2014/12/07 22:19
- 名前: 雪兎 (ID: gDKdLmL6)
第三十一話・後編 <対抗戦編>
「っ……!」
ユズカの声に瞬時に反応して、音波の防壁を展開したリリアンは、うっすらと目を開けた。
「…うそっ!!」
信じられない光景が目に飛び込んできた。
だだっ広い屋上全てとはいかないものの、辺り一面が氷の世界と化していたのだ。
そして、ドライアイスの霧に隠れた向こう側。
エリオットが、氷に包まれていた。
目に驚愕の表情を貼り付けたまま、飛びかかろうとしている姿勢で固まっていた。
「え、エリオットせんぱ、い…。」
ハクが震える声で言う。無表情なリュネットも、わずかに目を見開いていた。
どうなっちゃったの……。
「大丈夫だよ、ちょっと眠らせただけだから」
もやの向こうから、ぼんやりと二つの影が現れた。
喋っているのはユズカだった。「これでも手加減はしたんだけど……ごめんね?一定時間たったら消えちゃうから、心配ないから」
そういって、エリオットの入った氷を撫でるユズカ。手加減?そんなものどこにあると言うのだろう。これが彼女の必殺技なのだろうが、こんな魔法見たことも聞いたことも無かった。
これで戦力は三対二になったわけだったが、実力の差からして向こうのほうが有利なことは明らかだった。フレアが口を開く。「どう?これで逃がしてくれるかしら?…これ以上の戦いは無意味だと思うけれど」
リリアンは、気を失ったメロークが抱えている女神像をちらりと見た。
あれは、彼女達が潜入してまで手に入れようとした物。
渡してはならない。そんな予感が、リリアンの中にある。
カチャリ。
見ると、リュネットが、銃口を二人に向けていた。
「まだ、勝負はついてない。ボクと戦え」
はっはーん。あたしと同じ考えのようだね、キミィ!
リリアンはすかさず、はーいっと手を挙げた。
「ちょっとちょっとぉ、忘れてもらっちゃ困るよぉ。あたしらもいるでしょ?でしょでしょっ?」
するとハクも、小刻みにコクコクとうなずく。
よっしゃ!かかってこーい!!
それを聞いたフレアが、手をかざしながらいらだったように言った。「しゃらくさいっ。もう手加減しませんわ!出でよ、ビーストキングッ!!」
ぐぉぉぉぉっ、と唸り声がしたかと思うと。
さっきまでの獣人たちの三倍はありそうな獣人の王が、姿を現した。しかも、手下まで連れている。
それを見て、リリアンはすばやく獣王を指差し、叫んだ。
「はいハク君!いってらっしゃぁーいッ。」
「え、ええーっ!?…は、はいっス!」
突然名を呼ばれて驚いたハクだったが、とりあえず突撃する。
ハンマーを振りかぶり、えいっと殴った。のだが。
「び、びくともしてないーっ!?」
獣王は声一つ上げず、こちらに向かってきている。ハクが涙目でうったえる。「どーしましょう!倒せる気がしないっすう〜…。」
「おーほほほ!その程度の攻撃で、倒せる相手じゃないわよ〜!」
フレアが高らかに笑えば、ダメ押しのようにユズカが突っ込んできた。
「ちゃんと軽傷で済むように攻撃するから、よけないでよぉ〜?」
そう、笑顔で短剣構えて言わないでくださいッ。ハクは、そうよっぽどツッコみたくなった。
「こっちだって、なめないでよねッ!」
一瞬の隙を突き、リリアンがユズカの短剣を跳ね飛ばした。「あっれー、やっちゃったぁ。でもっ!」
やった、と思ったのもつかの間。ユズカが腕をブンッと振ると、しゅるりと鞭が出現した。
「な、なんなんすかあの人」
ハクがげんなりしたように言う。あの感じだと、他にもいろいろもってそうだなぁ。
と思いながら、ふと横を見ると。
「ええっ、えーーっ!?」
リュネットが、どでかいバズーカを構えていた。待て、身長くらいあるぞ?
「あ、あの、リュネットさ」「めんどくさい。一気に片付ける」
「え?」
「『シャイニング・ブラスト』。」
ドギューーーンっ!!
「ぎ、ぎゃああああああっ。」
隣でハクが悲鳴を上げたのも無理はない。巨大バズーカから放たれた光の光線は、とてつもない光と音を発しながら獣王たちに直撃した。
グォォォォォォンン!!
「う、嘘」
煙が消えたときには、獣王たちは消滅していた。
「すげぇ…!」ハクが感嘆の声をあげる。
そのとき、エリオットを包んでいた氷が、ピキリと音を立てた。
次回、第三十二話。お楽しみに☆