コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【募集あり】 ( No.120 )
日時: 2014/12/10 22:38
名前: 雪兎 (ID: gDKdLmL6)

第三十二話 <対抗戦編>

「うっ…フレアちゃんのビーストが…!」

ユズカが焦った声で言う。

フレアは、自分のビースト達が一瞬にして消え去ったことが信じられないのか、目を丸くして地面にへたり込んでいる。

これで三対一。普通に見ればリリアンたちのほうが有利だ。

リリアンは交渉してみることにした。

「えーとぉ。あたし達もう疲れたし、戦いたくないんだよねえ。だからその女神像をおいて、逃げてくれない?さっきのバズーカの音で、多分先生たちも気づいちゃったと思うし〜。」

だがユズカは、ぐっと唇を噛んで動こうとしない。

そして、うつむいたまま口を開いた。

「だめ…だよ。私達の目的のためには、ここで逃げられない!」

そしてバッと顔を上げると、

「ごめんなさいっ!『フリーズ・ワールド』っ。」

えっ!?しまっ…!

「必殺技を二連続!?そんなのありかよっ」

ハクが焦ったように飛びのくが、もう遅い。

すでに冷たい冷気が、リリアンたちを多い尽くそうとしていた……

             ☆

エリオットは、朦朧とした意識の中で目を覚ました。

ここは……どこだ?

僕…は。確か、あの女の子_____ユズカと戦って、それで。

周りを見渡そうとしたが、頭が動かない。それどころか、何故か体も動かないし、すごく寒い。

そこでエリオットは突然、意識がなくなる寸前に聞いた声を思い出した。

「んー、じゃあ、『フリーズ・ワールド』ッ!」

フリーズ……。もしかして氷?

氷、漬け……!?

自分で考えて、ぞくっとした。

フリーズ・ワールド、凍った世界。

自分が氷漬けになっているのだとしたら、この暗さも、寒さも説明がつく……。

そこまで考えて、エリオットは急に自分が情けなくなった。

僕は、結局、なんの役にも立たない。

いつもそうだ。頑張って習得したこの剣術も、勉強も。自分が臆病で頭が足りないばっかりに、まったく使いこなせていないじゃないか。

もう、何も考えたくない。

ぼんやりと、そう思った。このままではいけないことは分かっているけど。

そのとき、ある思い出がよみがえってきた。

始業式が終わって間もない頃、自分は不安でいっぱいで教室にいられず、外に飛び出していた。

あてもなくぶらぶらしている途中で、二人の女の子と数人の男子生徒を見かけた。

状況はまったく分からなかったが、金髪の女の子が白髪の女の子をかばっているようだった。その金髪の子がフィリアなわけだけど……あれ?
いままでどうして気が付かなかったんだろう。白髪の女の子って、どこかでみたことあると思ったら…まあ、それは置いといて。

自分達より数が多い相手に、しかも男子にひるむことなく立ち向かっている彼女をみていたら。

守りたいと……そう、思ったんだ。

そして僕は、近づいていって…彼らを。

あれ?それで、僕は……。

ふっと、笑みがこぼれた。

何だ。

何だ、僕は。

臆病者じゃ、ないじゃないか。

自分を信じよう。あの時僕は、自分を信じたから守れたんだ。

             ☆

「う…どうしよう、このままじゃエルっちみたいに。」

リリアンは、凍っているエリオットに目を向けた。

「あれ!?」

「…どうしたんすか?」

半ば諦めかけていたハクが、虚ろな目で聞いてくる。

「氷、ひび入ってない?」

「……え」

そのとき。

パリィィィンッ!!

「え!?」

ユズカが驚いて音のしたほうを見る。

そして、呟いた。「まだ、時間はきてないはずなのに!」

氷が割れると同時に、旋風が巻き起こる。

「うわっ!風が…て、エリオット先輩!?」

「うん。ゴメン、待たせたね」

そう、優しく言いながら現れたのは、紛れも無くエリオット本人だった。
すると、それまで黙っていたリュネットが口を開いた。

「エリオット、まさか魔法、を……?」

「うん、そうみたいだ。風魔法、か。」

エリオットはそう言って自分の手を見つめてから、ユズカに向き直る。

ユズカは唖然と立ち尽くしていて、いつのまにか冷気も消えてしまっていた。

「ユズカさん、もう君達に勝ち目は無いよ。降参してくれる?」

「……。」

その問いにユズカは、また唇を噛み締めるだけだった。  

    次回、いよいよフィリア&ジーク&ライム編に。お楽しみに!