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- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【新章スタート!】 ( No.134 )
- 日時: 2015/01/07 23:03
- 名前: 雪兎 (ID: gDKdLmL6)
第四十話 <女神像奪還作戦編>
ジークたち実行班は、囮班を残し一足先に校舎内へ入った。
「確か作戦では、まず誰かに女神像の場所を聞き出すんでしたよね?」
カイルが緊張感の無い笑みを浮かべて言う。ジークはふんと鼻を鳴らした。
「本来ならこういうのはお前も得意なんだろうが、ここは俺に任せてもらうぜ」
「もちろん、いいですよ」
ジークは軽く舌打ちをすると、ターゲットを定めに向かった。その後をこっそりハクが付いていったのを見ると、憧れの先輩のかっこいい姿を見届けるつもりなのだろう。
二人きりになるカイルとリリアン。おもむろにカイルが切り出した。
「そういえば…対抗戦の時に、あなたに指揮棒を貸してもらっていましたね。とても助かりました。お返ししましょう。」
そう言って指揮棒を取り出そうとするカイルを、リリアンは慌てて引き止めた。
「あ、いーのいーの!それはあげるよぉ。あたしには、まだ相棒がいるからねえ。それに、カイルっちは使役魔法が使えるんでしょ?」
少し驚いたような顔で、カイルが返す。「はい、そうですが…」
「なら、ぴったりジャン?指揮するみたいに、いろーんな物を操れたらさ。素敵でしょ?ね。」
リリアンの満点の笑みに、カイルも微笑を返した。
「それは、素敵ですね。ありがとう、もらっておきましょう」
☆
「ああ、こんなにも凛々しい先輩の背中…!ずっと見ていたいッス…」
ほぼストーカーのように、ジークの後をつけているハク。周りの視線もお構いなしだ。
するとジークは突然、怖そうなおばさんに声を掛けた。この学院の教師だろうか。
ハクは急いで出来るだけ近づき、耳をそばだてた。
「あのぉ、すみません。少しお話よろしいでしょうか…?」
ジークはいかにも申し訳なさそうな表情と、弱弱しい声を作っていた。
眉根を下げ、目をうるませ、のぞきこむように話しかけている。さすがっす、ジーク先輩!!…と、後輩が一人感心していると。
「…何?手短にお願いしますよ、忙しいんだからね」
「ありがとうございます!」
ジークはぱあっと顔を輝かせた。第一段階が成功したようだ。
「僕、古いアンティークにに興味を持っておりまして。今度の発表会のとき、それらについて話をしたいと考えているんです」
すると、おばさんの表情も少し明るくなった。「まあ、そんな若いのに。奇遇ねえ、私もなのよ」
かかった。
ジークは心の中で呟く。俺は運が良かったようだ。
「それで、この学院には、すばらしい品がいくつも保存されていると聞きました。是非拝見させていただければと…」
そうねえ、とおばさんは考える素振りを見せた。「でも、場所は誰にも教えてはいけないことに…」「お願いします!遠くから三時間かけてやってきたんです。一目だけでも…!」
ジークが、さらに畳み掛けると。
「部屋は、二階の廊下の右の突き当たりにあるけど…警備員さんがいるから、きっと入れないと思うわ。」
ジークは、心の中でニヤリと笑った。
「……そうですか。では仕方ありません、諦めます。ありがとうございました。」「ごめんなさいねえ。」
成功だ。くるりと背中を向けて歩き出す。
なーんだ、ちょろいもんじゃん。
…とジークは自分の話術を鼻にかけているようだが、自分の容姿も成功要因の一つだったことに、彼はまだ気づいていない。まあ、それはいいとして。
「ハク、いつまでこそこそやってんだ。…帰るぞ」
「ひいぃっ!?…は、はぁい…。」
驚きでぴょんと飛び上がった後輩にため息をついて、ジークは仲間の元へと戻ったのであった。
次回、第四十一話。お楽しみに☆