コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【新章スタート!】 ( No.136 )
日時: 2015/03/31 23:53
名前: 雪兎 (ID: FiSCMDMo)

第四十二話 <女神像奪還作戦編>

「この学院の生徒?どーいうこと?」

首をかしげるリリアンに、ジークは謎の集団の胸元を指差す。

「…見てみ。あれ、この学院の校章だ」

知恵の象徴であるフクロウがかたどられた、五角形のブローチ。確かに、学院の校門にこれと同じものが描かれていた気がする。

謎の集団は、よくよく見ればジークたちと同い年くらいの、少年少女たちだった。
武器を片手に下げ、ギラつく目でこちらを見つめる彼らは、明らかに異様だ。

するといきなり、一人の少年が動いた。

少年は、無駄のない正確な足取りで、近くにいたハクに向かって剣を振り下ろした。

「う、うわあっ。何すか!?」

情けない悲鳴を上げて飛びのいたハクの手には、早くもハンマーが握られていた。

「…どうやらこの人たち、無事に済ませてはくれないようですね。」

カイルが苦笑気味に言い、腰から指揮棒を引き抜く。

それに反応するように、一斉に武器を構える生徒達。危険を感じたのか、ジークも大鎌を、リリアンはハープを出現させた。

それが合図だったかのように、生徒達は一斉に襲い掛かってきた。三十人近くの攻撃をかわすのは容易ではない。

とはいえ、ジークたちのほうが実力は上のようで、余裕を持って相手を気絶させてゆく。でも、やっぱり数が多すぎる。

ハンマーの柄で相手を昏倒させたハクは、泣きそうな声で叫んだ。「どうするんすか、このままじゃ体力が減る一方っすよ〜!」

「そうだねっ。何か足止めでもできればねっ。」

攻撃をかわしつつ、リリアンも同意する。するとカイルが、「では」と両手を広げた。

「こんなのはいかがでしょう?」

カイルが指揮棒を一振りすると、部屋の隅からカサカサッという嫌な音がした。

「ま、まさか…」

ハクがぶるっと身震いをした瞬間、部屋の穴という穴から黒い物体が飛び出してきた。

「ぎゃああああっ。ゴ、ゴキ…!」ハクはジークに飛びつき、リリアンも顔を引きつらせている。

同じように、生徒達からも悲鳴が上がった(主に女子の)。何百匹ものGは、たちまち多くの生徒達を壁際に追い詰め、自慢げにひしめき合っていた。

これでもう身動きは取れないだろう。

「使役魔法か……にしてもお前、結構えげつないことすんのな…」

ハクを引き剥がしつつ、ジークがつぶやく。カイルは「何のことでしょう?」と言わんばかりに微笑んでいる。


気が付けばもう、黒コートの男はいなくなっていた。とはいえ、戦闘に神経を集中させている彼らには、知る由もなかったが。


「うーん。ふふふ、あたしもイイコト思いついちゃったよ?みんな、耳塞いでてね☆」

突然リリアンが、自身ありげにハープを構えた。何をするつもりなのだろう。疑問を浮かべつつ、三人は耳を手で覆った。

リリアンの白い指が、ハープの玄をなぞるように動く。

ポロロン、ポロン。

不思議なことにその音が流れ始めると、生徒達の動きが止まった。そして、次々と生徒達が倒れていったのだ。

リリアンが奏でているのは、おそらく優しい子守唄。

美しい旋律が響くたび、一人、また一人と、武器を取り落としていく。

そして最後の一人がうつぶせに倒れたとき、リリアンの手は止まった。

それに合わせて三人は手をはずす。ジークがぼーっとした顔で問う。

「…おい、今のって」

「うん、すごいでしょ。子守唄だよ♪…ってみんな、ちょっと影響うけちゃってるみたい、だね?」

リリアンが頭を掻きながら舌を出す。確かに三人とも、今にも眠りこけそうな顔で突っ立っている。

まいったなあ。

リリアンはそう、一人呟くのであった。

                 次回、第四十三話。お楽しみに☆