コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.141 )
日時: 2015/01/20 21:05
名前: 雪兎 (ID: gDKdLmL6)

第四十四話・後編 <女神像奪還作戦編>

「魔法攻撃…っスか?」

「確証はありませんが。では、ちょっと試してみましょう」

カイルはそう言うと、いきなり杖の先から水の弾を発射した。

ビュンッ!

すると。

着弾した瞬間、ぬいぐるみの体が少し傾いだ。よく見ると弾が当たった場所に、わずかではあるが破れ目が出来ている。

「ぴょんちゃん…!」

ルカから悲痛な声が上がった。

「ワーオ!本当だあ〜♪すごいねすごいね、カイルっちっ。」

ひょんぴょん跳ねて喜ぶリリアンに微笑み返すと、カイルは仲間に告げた。

「さあ、ここからは皆さんの出番です。四人で力を合わせて頑張りましょう」

「はーい。」

リリアンとハクが元気よく返事をし、ジークは「そんなこと分かってるし」と言わんばかりにそっぽを向いた。

さっそく攻撃を仕掛けようとした時だった。

うつむいて震えていたルカが、蚊の泣くような小さな声で漏らした。

「…やめ、てよ」

「え?」

「…もう、嫌だよ。傷つけ、ないでよ……嫌だよっっ!!」

苦しみに満ちたつぶやきは、悲鳴のような怒声に変わり、同時にぬいぐるみの両腕が天井高く上がった。

「何だっ!?」

「来るよ皆…気をつけて!」

そしてその太い両腕は、ジークたちめがけて振り下ろされた。

「う、うわああああ!!」

「避けろバカっ!」

ジークはとっさにハクの腕をつかんで横に転がる。
見回すと、他のメンバーも、煙の中でむっくりと起き上がった。無事のようだ。

「あ、ああありがと、ございます、ジーク先輩」

「…礼を言う暇があったら、さっさと攻撃すんぞ」

ジークはそういうと、自ら大鎌を薙ぎ、炎をぬいぐるみに浴びせた。

ぬいぐるみが両手で炎を振り払うように動く。やはり効いているようだ。

それが合図だったかのように、みんなは一斉に攻撃し始めた。ハクが岩で足場を崩し、リリアンが衝撃波で爆発を起こす。時には攻撃を避けながら、それでも善戦していた。

そのとき。

突然、ぬいぐるみの動きが止まった。

「?…どうしたんスかね?」

「ちょっと皆、いっかい落ち着こ」

リリアンはそう言って皆を制すと、ぬいぐるみの横を通り過ぎ、ルカの元へと向かった。

「ちょ、ちょっと、危な…」

「…いえ。もう彼は戦意を喪失したようです」

その瞬間、ぬいぐるみがどんどん小さくなり、ついには元の大きさに戻った。

「あ、戻った」

「…僕たちも行ってみましょう」

              ☆

ルカは、顔を手で覆ってうずくまっていた。

「…どうしたの?」

リリアンが優しく問いかけるも、返事はない。
仕方なく、質問を変えてみることにした。

「本当は、戦いたくないんでしょ?」

その言葉に、ルカの肩がピクリと震える。やっぱり。

「どうして戦うの?その…ぴょんちゃんを、傷つけたくないんでしょ」

「……。」

「戦わなくて、いいんだよ。誰かのために、あなたが傷つくことはないのよ」

「で…でも、僕…は」

そのときだった。

『ザザザッ…ザッ…誰、か…ザッき、こ…える?』

無線にノイズが走り、断片的にだがリンダさんの声が聞こえる。

「リンダさん?どうされました?」

カイルが返事をする。が、電波が悪いのかノイズがひどく、聞こえているのか定かではない。

『助…け、ザザッ…みん…なが、ザッ…かい、ちょう…が…きゃっ!』

それで、無線は途切れた。よく分からないが、学園の方で事件が発生したと見て間違いないだろう。

四人は、顔を見合わせた。

                 次回、第四十五話。お楽しみに☆