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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【参照1000突破♪】 ( No.154 )
日時: 2015/03/01 18:58
名前: 雪兎 (ID: /4zHEnTD)

第五十三話

そこに立っていた少年は、まるで薄暗い路地に差す一筋の光のようだった。

長めの白髪を後ろで一つに束ね、白いジャケットの襟元には3学年であることを示す学年章がきらめいている。

そしてその金色の瞳が放つ鋭い眼光は、三人の不良たちを順番に捕らえた。

少年の手が、装備していた二振りの太刀と、一振りの小太刀に伸びる。


「…俺、短気な方なんだが」


その一言。

たった、その一言だけで、空気が凍ったようだった。

ゾクリ。

敵意を向けられているのが自分達ではないと分かっているのに。

私は、体の震えを止めることが出来なかった___。

この人は…強い!

「…おい、あいつまさか」

不良の一人が、ぽつりと呟く。

その言葉の意味を理解したらしい不良たちは、悲鳴も上げずに走り去っていった。

……。


「ふう。」


静寂を切り裂いたのは、少年のため息だった。

そして少年は、私達の前に立つと、軽く片手を上げた。

「や。怪我とか無い?」

えっ。

「あ、あ…ありがとうございます!無いと思いますたぶん」

さっきまでとのオーラの違いに困惑し、思わずテンパってしまう。
この人、三年生だよね?手も足も長いし、なんかかっこいいなあ。

「えっと、その。お名前、教えていただいても良いですか…?」

私がおずおず聞くと、先輩は笑って答えた。

「ああ。俺はフリト・ノイモーント。よろしく」

「は、はい!よろしくお願いします」

…。

気まずい。

どうしよう、なんか話すことは…!

あっ。

私は会ったときから気になっていたことを、何気なく言った。

「なんか、リュネ…あ、この子は私の友達のリュネットって言うんですけど。フリトさんて、リュネによく似てますよねー…なんて。」

はは、と笑う。なんとか会話はつなげたか…。

私の言葉に、フリトさんはゆっくりと、リュネットの方を見た。

___と、その瞬間。

フリトさんの目がわずかに見開かれた。「君は___。」

……え、何?

私なんかまずいことでも言った、のかな…?

リュネットは、割れた髪留めのことを気にしていて、フリトさんのことは興味なさげだった。

その様子を見て、フリトさんは呟いた。

「…やっぱり、な。」

え?

「__じゃあ、俺もう行くから。気をつけろよ」
背を向けて歩き出すフリトさんの背中に向かって、私は頭を下げた。

「あ…、はい!本当にありがとうございました!」

その直後、リュネットが顔を上げた。

フリトさんが、一瞬だけ肩越しにこちらを振り返る。

二人の視線が重なる。___だが、お互い何も言うことは無かった。

              ☆

その次の日。

今日も休みなので、私は一人商店街に向かった。

いろいろあった昨日の事を思い出しながら、お目当ての店を探す。

「あ、あった!」

昨日、リュネットが髪留めを買ったあの店。

私は、ちっぽけな屋台の前に立った。

              ☆

「リュー、ネ!はいっ!」

「…?……!!」

振り返ったリュネは、私の手のひらに載っているものを見て、目を丸くした。

「これ、昨日壊れちゃったでしょ。同じのは無かったんだけど、似合うかなー、って思って。」

私は昨日、壊れてしまった魔よけの髪留めの代わりを、買いに行ったのだ。
同じものは諦め、私が買ったのは月と星があしらわれた髪留め。光魔法を使うリュネにはピッタリかな?…っていう、安易な発想だったけど。

以外にも、父さんが持たせてくれた少ないお金でも、買える様な値段だった。今考えると、おばあさんが値引きしてくれたのかもしれないな。

リュネットは、キラキラした目で髪留めを受け取り、嬉しそうに頭に着けた。

「…あり、がとう」

か、かわいっ…っ!!

私は思わず、リュネをぎゅーっと抱きしめた。

                 次回、第五十四話。お楽しみに☆