コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【新章スタート☆】 ( No.161 )
- 日時: 2015/03/24 19:49
- 名前: 雪兎 (ID: /4zHEnTD)
第五十八話 <何でもアリな体育祭編>
会場の全員が注目する中、スタートラインに立ったのは。
「あっ…。カイルくーん!ロゼッタさーん!頑張って〜!」
その姿を認め、私は大声を張り上げた。二人が手を振り返してくれる。
ロゼッタさんは、どこか緊張気味に周囲を見渡している。カイル君は、もちろんのことその笑みを崩さず、女子の声援を黙って受けていた。
隣に立つのは、腕に何か腕章をした女の子。さっきからしきりにカイル君に熱い視線を送っているからして、多分ファンクラブの子だな…。
…などと考えていると、パァンッとピストルの音が鳴り響いた。
いよいよスタートだ!
道のりは直線で、50メートルの距離。その滑走路を、6人が今、走り出___
…さなかった。
みんな、スタートラインにとどまって何かをしている。
どうしたんだろう?
戸惑っている私の耳に、キャンディさんが耳打ちしてきた。
「みんな、魔法を使うみたいですわね。…見てて御覧なさい、コレがこの体育祭の醍醐味ですわ!」
途中からやけに熱くなって言うキャンディさん。うんうん、みんな好きだもんね、魔法使うの。
よし、ちゃんと観戦しないとな!まずは___。
ロゼッタさんは、どこから出したのか本を開いていた。まもなくそれは光を発して……
「てやんでい!こいつら全員倒せばいいのかい!…何、違う?ああ、あれをかっさらってくりゃあいいんだな。」
出現して早々、大声で喋り始めた長身の男。何やら説得された後、ロゼッタさんを抱えて尋常じゃない速さで飛んでいった。…あれ、ロゼッタさんの使い魔かな?
カイル君は……えっ!?もうあんぱんが手に…。よく見ると、鳥が真上を旋回している。使役魔法か。
…と、ちょっと目を離した隙に、ロゼッタさんはもうゴールしていた。
なんか、使い魔と仲良くあんぱんを半分こしてるように見えるんだけど…まあいいや。
続けて、カイル君もゴールテープを切っていた。口の端を手で押さえ、「ごちそうさまでした」とつぶやくと、観客(主に女子)からの悲鳴のような歓声が沸く。
あれ、もう一人の子は?
振り返って見ると…あれ、何してるんだろう?
砂埃でよく見えない___あ、一人飛び出してきた。
その子は、赤チームの最後の一人の女の子だった。彼女が腕を真上に伸ばせば、地中からツルのような植物が飛び出し、あんぱんを捕らえて術者の元へと運ぶ。
そしてあんぱんをかじりながら、去り際に一言。
「うふふっ、カイル様の邪魔はさせないんだから♪」
こ、怖ええぇぇ!
背中に、ゾクッと悪寒が走った。道理で、桃チームが一人も来ないわけだ…。
砂埃の中を、よーく目を凝らしてみると、桃チームの三人が地団駄を踏んでいるのが見えた。
…いや、地団駄なんかじゃない。ツルが体に巻きついて、身動きが取れないんだ。
「…あきれた妨害工作ですわね。」
キャンディさんが、言葉の通りあきれ気味に言う。いやあ、女の子って怖いなあ。
…ていうか、これってアリなの?審判の人も…何も…言わないし…。
……。
うわあああん!やっぱり、何でもアリな体育祭だ〜!
次回、第五十九話。お楽しみに☆