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- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【新章スタート☆】 ( No.167 )
- 日時: 2015/04/10 19:10
- 名前: 雪兎 (ID: FiSCMDMo)
第六十二話 <何でもアリな体育祭編>
「……はあ〜〜。緊張するぅ〜。」
言ったそばから身震いがしてきて、思わず身を縮める。
現在、パン食い競争スタート前。チームのみんなも緊張の面持ちで、列に並んでいる。
はあ、こういうのは昔から苦手なんだよねえ。足もそんなに速くないし。
私は第五走者。エリオット君は1番目で、アンカーはリュネだ。
スタートラインでは、エリオット君が顔をこわばらせて並んでいた。でも私ほどは緊張していないみたいで、瞳の奥には何か強い意志のようなものが感じられる。
よし、頑張るぞ!…と一人で気を引き締めていると、後ろから「…フィリア」と鈴のような声が。
「リュネ。どしたの?」
「…ん」
リュネは無言で、こぶしを目の前に突き出した。
これって……。
意図を察した私は、ほほえみながら自らのこぶしを軽くぶつけた。
コクリ。
リュネが、ふわりと笑う。それだけでなんだか、勇気が出た気がした。
「よっしゃ!気合い入れるよっ、リュネ!」
☆
スタートの合図、ピストルが煙を吹いた。
走者が走り出すと同時に、「がんばれー!!」と各チームから声援が飛ぶ。
エリオット君、大丈夫かなあ?
ついこの間、風魔法覚えたばかりだし。まあ、頑張り屋さんだからきっと上手くいくよね!
視線でエリオット君を追う。今は2番手!
エリオット君は、パンの下まで来ると、バッと上を見上げた。
「よしっ…行けっ!!」
そう叫ぶと同時に、空を切るように腕を凪ぐ。
一瞬陽炎のように空気が揺らぎ、放出された真空刃が糸を断ち切る———!
…かと思ったんだけど。
切断されたのは、なぜかパンのほうで。
まあ、半分だけは落ちてきたから、いいんだけど……ね。
半分だけになったあんパンを、呆然と見つめるエリオット君。
…って、ちょっとちょっと!
私はあわてて叫んだ。「おーーい、エリオットくーん!ゴール、ゴール!」
すると、その声に気付いたのか、ハッと前を向いてゴールテープに向かった——。
☆
戻ってきてしょんぼりとしているエリオット君に、私はおずおずと声をかけた。
「まあまあ。そんな落ち込まなくても、ゴールできたし良かったじゃない。」
「でも……結局五位で…」
「大丈夫!その分私たちが取り返すから。…カッコよかったよ!」
「う、うん…。」
と、いっても。私はまだ、パンを獲得する方法を得られていないのである…。
「じゃ、私もう行くからね!」
そう声をかけ、不安を抱えたまま、私はトラックへと飛び出した。
次回、フィリアが走ります。第六十三話、お楽しみに!