コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【オリキャラ募集中】 ( No.169 )
- 日時: 2015/05/03 22:31
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
第六十四話 <何でもアリな体育祭編>
「……。」
あんなにも緊張していたのに、案外スタートラインに立ってみると緊張しなくなるものだ。
まあきっとそれも、最下位が確定しているせいもあるかもしれない。
「どーしたもんかな…。」
そして合図が鳴った時も、それはどこか他人事のように思えた。
——力を込めて一歩を踏み出す。せめてスタートだけは、後れを取らないようにしなければ!
自分でも、顔がこわばっているのがわかる。
「頑張れー!」
風を切る音の中、リリアンの声が聞こえたような気がした。それだけじゃなく、観客の中に見知った顔もチラリと見受けられた。
たくさんの人が見ている。そのことが、ますます自分にプレッシャーをかける。
気が付けば、あんぱんの真下にいた。見上げると太陽がまぶしく、思わず目を細める。
横を。選手がすり抜けていく。その手には、やはりあんぱんが握られていた。
でも、私は…。
私はここで、ただ見上げることしかできない。当然だ、魔法が使えないのだから。
風に乗って、ざわめきの中から声が聞こえる。
「ねえ、あの子何してるのかな?あの…金髪の子」
「あー…あれってもしかして、無能力者の子じゃね?」
「なるほど、だからかー」
「なんかかわいそうだよな。」
「ぷっ。確かに」
私、なんでこの学園に入学できたんだろう。
魔法が使えないこと。私が暮らしていた町では、それが普通だったのに…。
——欲しい。
力が欲しい……!
だれにも負けないような力。私に…。
『ほう…やっと我を欲したか』
ドクン。
な…なに?この声って。
その瞬間。
バチン!!
目の前が、カメラのフラッシュをたいた時のように点滅した。
「え?」
困惑する私の顔に、落ちてきた「何か」が影を落とす。
「う、うわっ!?」
反応しきれずに顔で受け止めたそれは、まぎれもなく吊るされていたはずのあんぱん。
「…やっぱり、今のって」
☆
「…やっぱり、今」
ジークは、あんぱんを手にし、あわてて走っていくフィリアの背中を見送りながらつぶやいた。
「あいつの目、一瞬赤く…」
ぎゅっとこぶしを握り締める。「カウントダウン」は、もう始まっているのか…!
このまま、浸食されてしまったら。
ジークは、こぶしを開いた。爪が食い込んだ手のひらを、じっと見つめる。
「…俺が。ほかの誰でもない、俺が」
守るって。そう、決めたんだ———
次回、第六十五話。お楽しみに☆