コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【オリキャラ募集中】 ( No.171 )
- 日時: 2015/05/03 22:35
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
第六十五話 <何でもアリな体育祭編>
リュネット・レオ=コーカーは思考していた。
先ほど、ゴールラインを切ったフィリアが、落ち込んだ顔で列に並んでいくのが見えた。
結果は6位、最下位という結果だったが、魔法が使えないのによくやったと思う。
そう、今すぐにでも慰めにいきたい。恩返しがしたい。でも自分はアンカーで、ここを離れる時間などない。
リュネットは、ぎゅっとこぶしを握りしめた。
フィリアも、あの弱虫エリオットも落ち込んでる。
———頑張るぞ。
そう、心の中で気合いを入れなおすのだった。
☆
やっぱり、ね。
ある程度、予想はしていた。予想と違うところといえば、あんぱんを取れずにリタイア……という結果にならなかったというところだ。
なぜ、あんぱんが落ちてきたのか。その答えはおそらく、あの時聞いた声。恐ろしい力を持った、美しき竜神の力。
自分の中に宿っているこの力に頼ることは、果たして正しいことなのだろうか?
そっと、胸に手を当ててみる。ドクン、ドクンと心臓が脈打っている。
次に、腕を動かしてみる。動く、自由に動く。そのことに、ひどく安心している自分がいる。もしかしたら、この未知の力に、私は——。
「まあ、そう落ち込むことないですわよ。」
ふいに、ポンと肩に手が置かれた。はっとして振り返ると、腕組みをしたキャンディさんが立っていた。その後ろに、エリオット君も。
「まあ、足手まといにならないでとは言いましたが。精いっぱい努力している人間を無碍に扱うほど、わたくしの心は狭くありませんことよ?」
「…うん。僕も、いいところ見せられなかったけど。こんなところでへこたれてる暇があったら、自分の力を制御できるようにって———そう思えたんだ。…フィリアのおかげだよ」
「二人とも…。」
私はそっと目を伏せた。バカみたい、一人で落ち込んで。
自分の力を制御、かあ……。
「まあかくいうわたくしも、さっきは加減を間違えてパンを焦がしてしまいましたし。お互い様、ですわ」
「うん…ありがとう!私も頑張るね!…そういえば、もうそろそろリュネが」
振り向くと、ちょうどスタート直前のところだった。
リュネは少しうつむくようにして、目をつぶっている。精神集中だろうか。
係員が、ピストルを持った手を挙げた。引き金に手がかかって———
パンッ。
その瞬間、リュネの視線が私たちを射抜いた。
えっ?
もうみんなスタートしてるのに…動かない!
「リュネ、何やって———」
言いかけた途中で、リュネが片腕をスッとあげた。
そしてそのまま、私たちを指さし、
何かを呟いた。
えっ。
何?と聞き返そうとしたその時。
ぶわあっ、と。
視界が、一気にホワイトアウトした。
「う…うわ…っ!」
「な、ん…、何事、ですの!?」
会場中からも、悲鳴に似た声が次々と上がる。
い、痛い。目が…見えない!
この光は…?
次第に光が弱まっていく。それと同時に、なぜか会場がざわつき始める。
うっすらと見える。ゴールラインに立つ人影。その手には丸いシルエット。
「あれは……」
誰かがつぶやいた。顔を見なくてもわかる。長くて少し癖のある髪。そして、真っ直ぐこちらを指さす細い腕———
「リュネ……!」
言葉は発していない。でもその眼差しは痛いほど真剣で、強い光をたたえていて。
伝えたいことが、わかるような気がした。
『ボクが支える。だから諦めるな。失敗を恐れるな。何度でも挑戦すればいい。』
そう、聞こえたような…。自然と、笑みがこぼれる。横を見ると、二人も笑っていた。一人は自信に、一人は決意に満ち溢れた顔で。
———次は、必ず勝つ!
次回、第六十六話。お楽しみに☆