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Re: えっ、今日から私も魔法使い!?【オリキャラ募集中】 ( No.188 )
日時: 2015/05/24 18:59
名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)

第七十話 <何でもアリな体育祭編>

その後も、借りもの競争はさすがの盛り上がりを見せた。

テントにいる友達から、先生方から、時には観客から。勝ち負けを決めるゲームだけど、みんなとっても楽しそう!

…まあ、リュネが「イス」というお題に対して、教室から本当にイスを持ってきて、それでも2位だったのには度肝を抜かれたけど……。

そんな感じで、現在に至るわけである。

スタートラインには、緊張したような、はたまた覚悟を決めたような、いずれにせよ真剣な表情のエリオット君が佇んでいる。

あれから様子が変なんだけど——本当に大丈夫なのだろうか。

ピストルが煙を吹き、三人が地面を蹴った。スタートだ!


              ☆


エリオットは考えていた。フィリアにどう切り出すかである。

——本人は無自覚だろうが、実はこの少年、行き過ぎるくらいに真面目なのだ。つまりは、「ただ謝るだけじゃ許してくれないだろう」とか思っているわけであって。

少しカーブに差し掛かったところで、カードが手に出現する。すぐにそれをめくったエリオットは、ハッと息をのんだ。

そして、その口元に笑みが浮かぶ。

(これだ……!)


               ☆


どうしたんだろう。他の2人はもうお題を探しに行ったのに、エリオット君は立ち止まったままだ…。


すると、ふいに。


エリオット君が両手を広げた。ギュッと目を閉じたまま、大きく息を吸い込む。

風が、変わった。

ザワザワ、ザワザワと、まるでエリオット君に吸い込まれてるみたいに。


「あっ、見て!」


誰かが叫んだのをきっかけに、みんなが空を見上げた。

そこに舞っていたのは、たくさんの花、花、花。

コスモス、マリーゴールド…ほかにも、色とりどりの花がひらひらと舞い降りてきた。

「な、何ですの……」

戻ってきたキャンディさんが、あんぐりと口を開けている。

「でも、きれい」

となりでリュネが、目を細めながらつぶやいた。


「フィリアーー、ごめんねーーー!」

えっ!?

いきなり名前を呼ばれたので、ビクッと肩が震える。


「これで許してほしい!だから、また相談に乗ってくださーーい!!」

会場が小さな笑いに包まれる。でも、それはバカにするようなものではなく。


私は少し恥ずかしさを覚えながらも、叫び返した。


「もちろん、ОKに決まってるよ!ありがとう、とってもきれいだったよーー!」

…あはは。こんなことしてるときじゃないのに、もう…!

エリオット君は泣き笑いのような顔でうなずくと、ゴールテープに視線を向けた。

でももう、他の2人は走り始めてる。このままじゃ追いつかないかも!

でも、エリオット君は諦めてなかった。

「うおおおおああああ!いっけええええ!」

そう叫んだと同時に、エリオット君は走り出す。でも、

「速度が、…さっきと全然違う!?」

「きっと、自分の後ろだけに追い風を吹かせているのですわ。彼は———」


前方を走っていた2人が、驚いた表情で振り向く。背中を押す風圧に時々つまづきそうになりながら、その横をすり抜け。

「『努力型の』天才ですわ!!」

薄汚れたスニーカーが白線を超えたと同時に、カードの内容がモニターに表示される。

「『花』かあ〜。やば、なんか一生忘れられないくらいきれいだったよ〜。」

誰かがそう言っているのが聞こえた。名前も知らない人だけど、私も同感だな!


               ☆


ゴールしたエリオットは、クラスメイトに肩を叩かれながらもう一度カードを見つめた。

彼の視界には、モニターに表示されなかった小さな文字が映っていた。


『彼女を待たせるな、馬鹿者が。お前ならできるはずだ…この私が言うのだからな。——私はいつでも見ているぞ。これでもまだぐずぐずと迷うつもりなら、退学にしてやるからな。』


「…ありがとう、*****。」

その呟きは、おそらく誰にも聞こえなかっただろう。いや、それで良いのだ。

エリオットは、すがすがしい気持ちで空を見上げたのだった。


                 次回、第七十一話。お楽しみに☆


エリオットに激励の言葉を贈ったのは誰か、もうわかりましたね?そこは、ご想像にお任せします。